『ブスなんて言わないで』著者が問う、ルッキズムへの向き合い方 「あまりにも丸腰で語られすぎている」
読者の反応と作者の願い
――SNSで反響が寄せられているそうですが、1番盛り上がったのはどの話でしたか?
とあるアラ子:反響が大きかったのは、物語の仕掛けの部分でもある3話です。梨花の過去を描いた回ですね。プラスサイズモデルの奈緒美が登場する7話も反響があったと記憶しています。ボディポジティブって、だいたい身体のことだけで、顔に関しては触れらないんですよね。とはいえ、彼女たちの活動によって、太った人への印象が近年ぐんと変わったのも事実です。漫画に出てくるプラスサイズモデルの奈緒美には、知子が言い放った「太ってるだけのただの美人」に言い返せる言葉があると思います。
――批判なんかはきますか?
とあるアラ子:「リアリティがない」って意見を頂くことはありますね。「ブスをいじめるのは女子ではなく男子だ」とか。その人にとってはそうかもしれないけれど、世の中にはいろんなケースがある筈です。一人ひとりが見ている世界は狭いのに、なんでそんなこと言えるのかな、とは思います。でも、さっきも言ったように、ルッキズムは誰もが当事者だから話しやすいんですよね。だからこそ、少し立ち止まってみてほしいな、とは感じます。
ルッキズムについて話し合ってほしいけど、みんな丸腰で語りすぎ
――すごく真面目に取り組んでらっしゃるんですね。
とあるアラ子:はい、本気で取り組んでいますよ(笑)。インフルエンサーが「自分はこうしてルッキズムから解放されました」なんてインタビューで話しているのを見ると、すごく腹が立つんですよね。今悩んでいる人をどうやって解放するかを話して欲しいと思ってしまって……。発言力のある人には、もっと社会がどう変わっていくべきか話し合ってほしいんです。
ここ数年で、フェミニズムを取り上げた記事や本を目にすることがグッと増えたように思います。でも、ルッキズムに関しては、言葉を聞く機会は多い一方で、それほど深く知ろうとされてないイメージがあるんですよね。なんというか、あまりにも丸腰で語られすぎているというか……。美醜について書かれた本って意外とたくさんあって、すごく面白いんですよ。そこに知りたい答えが全てあるわけじゃないですが、読む前と後では頭の中でクリアになっているものの数が違うと感じます。
ルッキズムはもっと語られるべきだし、みんなもっと勉強するべきだと思いますね。『ブスなんて言わないで』がそのきっかけになってくれるなら嬉しいです。特に本を読むと、いろんな考えに出会えるのでオススメです。ただ自分の漫画は、できるだけ多くの人に読んでもらいたいから、ネットでリサーチして、世の中の人の考えからあまり逸脱した内容にならないように意識しています。まずは共感してもらうことが大切だと思うので。
――なるほど……。言われてみれば、私も迂闊に語っていました。
とあるアラ子:『ブスなんて言わないで』の登場人物は大人ばかりですが、外見のことで一番悩んでいるのはティーン世代の女の子だと思うんですよね。大人になると「なんだ、自分の外見って普通じゃん」って思えたりもするんですが、中高生のときって本当に悩むじゃないですか。摂食障害にかかるのも若い女の子が1番多いですし、今は特にSNSの影響もありますよね。ルッキズムを語るなら、そういう子たちをどう救ってあげられるのか、を考えるべきだと思うんです。『ブスなんて言わないで』の登場人部物は、まだまだ自分のことに必死ですが、ゆくゆくは若い人たちの生きづらさに寄り添ってほしいと思っています。
&Sofaで連載中の『ブスなんて言わないで』は、新たなフェーズに突入し、シスターフッドの点でも見逃せない展開になってきた。
「ブスのことを描けば面白いと思って始めた連載が本気で取り組みたいテーマに変わっていった」と語ったとあるアラ子氏。「ルッキズムをぶっ潰す」精神で挑んでいる『ブスなんて言わないで』を、是非とも多くの人に読んでもらいたい。
■書籍情報
『ブスなんて言わないで』
とあるアラ子 著
発売日:5月23日
価格:748円
出版社:講談社