【漫画】楽しかった子供の頃の夏休み……大人になって持ち越せた唯一のモノとは?

ーー宿題に苦労する心情と共に、デティールの細かい背景描写からなつかしさを覚えました。創作のきっかけを教えてください。

大塚志郎(以下、大塚):私は自分が過ごした平成元年から平成10年くらいの時代がたまらなく好きで、その時代をコンセプトとした漫画など見つけるとすぐ読んじゃいます。しかし、そういった漫画や作品を読むと「これは本当に平成なのか?」と感じることもあり、自分の思う解像度で平成初期の時代を感じることができないことが多くありました。

 「もうこれは自分で描いた方が早いぞ」と思い立ち、自分が思う平成初期の時代を題材とした作品を描きはじめました。

ーーTwitterで本作が投稿された際には共感の声が多く寄せられていました。

大塚:本作は同世代の読者さんにはめちゃくちゃ共感してもらえたのですが、ちょっと世代が外れた方からは途端にそっぽを向かれるという状況を実感した作品でもあります。今後は昭和や平成後期、令和といった、なるべく広範囲の世代の人にも楽しんでもらえるような平成漫画にできたらと思います

 以前に耳鼻科の話を題材にした漫画を描いたのですが、そのときにたくさんの共感をいただけたことがとても印象深いです。平成がどうのって考えていくうちに自分でも訳がわかんなくなってしまい、耳鼻科に通っていたころの思い出をそのまま描いちゃおうと思い立って描いた作品なのですが、思いのほか共感の声を頂きまして。以後、自分の過去に起こったことをベースに話を作ることを大事にしようと思いました

ーー平成初期の時代の魅力とは?

大塚:いろんなものが緩かったことがよかったなと思っています。公園にあった回転式の遊具による事故が増えたり、お祭りなどでの集団食中毒事件が起こったのが1990年代ごろなんですよね。これまで存在していたものがどんどん消えてしまうことにさびしさを感じ、規制がかかる前の盛り上がっていたころを漫画に描きたいと思うようになりました。

ーー過去の情景を高い解像度で描くための方法や資料について教えてください。

大塚:インターネット、そして自分の思い出です。インターネットは当時の景色について調べるためには便利ですが、実際に平成初期に存在していたものかを判別することが非常にむずかしくて。駄菓子屋にあった自動販売機をインターネットで探しても見つからず、2時間ほど調べてしまうこともありました。インターネットで調べつつ、確証を得るには自分の記憶が頼りとなっていますね。

 今描いているのは私が小学生だったころに住んでいた街ですが、ひさびさに帰省すると街も成長しており当時の面影が少なくなっていました。自分の思っていた印象とは異なる街となっていて、気持ちが迷子になってしまいましたね。そういったことも含め、平成初期の情景を描くには自分の記憶が頼りになってきているなと感じています。

ーー本作や平成初期を題材とした作品を描くなかで意識していることは?

大塚:昔を懐かしむ、“エモい”感覚を大切にしていきたいですね。昭和時代を切り取った作品は多くありますが、そろそろ平成初期の時代がよかったなというものも増えてほしいなと思います。懐メロの特集で安室奈美恵や小室哲哉の楽曲を耳にすると「あ、当時の私たちが聴いていたものはもう懐メロなんだな」と思いますね(笑)。

ーー漫画を描きはじめたきっかけを教えてください。

大塚:昔から勉強が苦手で、机に向かうことも嫌いでした。でも学校そのものは嫌いではなく、とくに絵を描くときだけは時間を忘れて机に向えていたんです。そんな自分に気づいて「これは仕事にできるんじゃないか」と高校生ぐらいのときにぼんやり考えてから、現在まで漫画を描くことを飽きずに続けています。20年以上にも亘り漫画を描き続けていますが、飽きずに描き続けている自分に驚きますね。

ーー今後の目標を教えてください。

大塚:自分が1番上手く、面白く描けるものを追求して漫画を作るのが長い目標です。自分の実体験をベースとした作品は自分にしか描けないので。また、ちょっとでも興味の出たものは野次馬根性で、にわかでも浅くても、フットワークを軽くしながら描いていきたいですね。

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる