元記者・堂場瞬一が「小さき王たち」シリーズで描く、政治家と新聞記者の昔と今

堂場瞬一「小さき王たち」シリーズレビュー

 第二部で総司は治郎を攻めて追い込むとともに、同じ民自党内で出世の障害になりそうな人物たちを排除して勢力を伸ばす。報道機関にも食い込んで、社会部が正義を振り回して政治家を追い詰めるようなことが起こらなくなる仕掛をめぐらせる。その結果として報道機関がどのような存在になっているのか。第二部でも仄めかされていた、ネットの普及がもたらす変化が報道をどう変えているかも含めて、描かれ方が気になる。

 毎日新聞の記者だった坂夏樹が4月に刊行した『危機の新聞 瀬戸際の記者』(さくら舎)によると、官房長官の会見のように相手の話をPCに直接打ち込むだけでは、何が核心なのかを即座に判断して記事にすることは難しいらしい。聞いた話で疑問に思ったことを聞き返し、出てきた答えからまた聞くようなやりとりを繰り返して、ようやく本音が出てくる。

 第一部の治郎はもちろん、第二部の和希でもそうやって真実に迫ろうとしていたが、第三部ではどのような取材が行われているのか。結果として報道はどのようになっているのか。一方で政治も、二世三世から果ては四世へと受け継がれる家業となってしまったことで何か弊害は出ていないのか、小選挙区と比例代表が並立する選挙制度となって現れた政治家と、それを支える世論はどのようになっていないのか。

 興味を満たしてくれて、そして三代にわたる因縁に決着が付く『小さき王たち 第三部 激流』を読めば、今の政治と報道が抱える問題も、そこから脱するための道も分かるかもしれない。

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