衝撃展開で議論を呼んだ『呪術廻戦』、最終巻はなぜ好評? 読後感がいいエピローグ&「あとがき」に注目

 芥見下々による人気漫画『呪術廻戦』のコミックス第29巻、ならびに最終30巻が12月25日、同時発売された。渋谷駅周辺でのド派手な広告展開、また新聞各紙で展開された一面広告など、お祭り騒ぎのなかで発売された最終巻が、ファンの感動を呼んでいる。

 同じく「ジャンプ」系列の人気作でいうと、12月18日に最終16巻が発売された『【推しの子】』について、終盤の展開や描き下ろし漫画に賛否の議論が集まり、「炎上」と言える騒動を巻き起こしたことが記憶に新しい。昨今の漫画・アニメ界で屈指の人気キャラクターとなった五条悟の扱いなど、『呪術廻戦』もさまざまな議論を呼んだ作品だが、最終巻は比較的あたたかく受け入れられている印象で、作者に対する感謝と労いの言葉が多く見られる。

 要因のひとつは、最終巻に掲載された「エピローグ」の充実だろう。事前に発表されていたように、「小沢優子」「パンダ」「釘崎野薔薇」「裏梅」のその後を描いた短編が描かれており、そのどれもが、物語の本筋に大きく影響させることなく、気になるキャラクターたちの現在と未来を想像させる読み心地のいい内容だった。

 ちなみに、「小沢優子って誰だっけ?」という人は少なくなさそうだが、「虎杖悠仁に好意を寄せている中学時代の同級生」と聞けば思い出す人が多いだろう。本作で珍しいラブコメパートで深い印象を残した彼女の目線で、主人公・虎杖のその後の姿が控えめに描かれているのが、切なく爽やかだ。

 そして、最終巻の読後感を決定づけているのは「あとがき」の内容だ。過去には、「八百屋は野菜のプロなので、今後漫画でミスしても許してね」「みんなの器が鬼デシリットルなところ見せてくれよな」と読者を煽るような文章も(読者の捉え違いも含めて)話題になった芥見下々が、“らしい”言葉で本心を吐露しつつ、反省と各方面への感謝を綴っている。

 詳しくは実際に最終巻を手に取って確認してもらいたいところだが、理不尽な批判も「根本が自分の漫画家としての未熟さが原因」と飲み込み、「読者の方が安心して私の漫画を読めるように」と成長を誓う内容だ。堅苦しくない素直な言葉が並んでおり、それが読者の心に響いた結果、あたたかい反応が増えているのではないか。

 少し気になったのは、締めくくりに入る一文に、「私が描く『呪術廻戦』はここで終わりです」という言葉があったこと。考えすぎとは思うが、「私が描く」が終わりならば、別の漫画家が作画を手がけるスピンオフならあるいは……という期待をしたくなるのがファンというもの。いずれにしても、「またどこかで」という締めの言葉が少しでも早く実現することに期待したいところだ。

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