フランス、なぜ日本の漫画が人気? フランス大使館職員が考える、アニメからの影響と特殊なテーマ設定
■フランス人が日本を訪れる大きな理由
フランスは古くから日本文化に関心を寄せてきた国である。その関心の対象は歌舞伎や能などの伝統芸能から、現在の日本のポップカルチャーを代表する漫画・アニメまで、実に幅広い。
実際、アニメ文化が根付いている池袋や秋葉原に足を延ばすと、フランス人を目にしない日がないほどであり、日本を観光する重要な目的の一つになっているのは間違いない。フランスでは日本アニメのイベントが行われ、コスプレに親しむ人も多いという。
フランス人にとって、日本文化はどのように映るのだろうか。子どものころから日本の漫画やアニメが大好きで、来日して22年、現在はフランス大使館の職員でもあるムサ・ジェレミさん(47歳)に話を聞いた。
■フランス人観光客、40万人突破目前
――今、フランスから日本に来る観光客が増加していると伺っています。
ジェレミ:今年の10月までで、約30万人のフランス人が日本を訪れています。今年は40万人を超えるかもしれません。ヨーロッパのなかでも、日本を訪れる観光客の数でフランスは1位なのです。フランス人は日本の文化が大好きで、特にアニメや漫画がその人気を牽引していると思います。
――なぜ、そんなに日本の漫画が受けているのですか。
ジェレミ:もともとフランスでは『AKIRA』や『ドラゴンボール』など、日本のアニメが人気でした。アニメが先に人気が出て、その後に日本の漫画も売れそうだということで、出版されるようになりました。日本の漫画の単行本は白黒ですが、200ページ以上のボリュームがあって、どれも読み応えがあったこともあり子どもたちに人気でした。
――ジェレミさんから見て、日本の漫画やアニメのどんな点が魅力的に映りますか。
ジェレミ:やっぱり、料理、スポーツ、SF、あらゆるジャンルの漫画があるのが大きいですね。アメコミと違うのは、主人公が最初は弱かったり、失敗したりするけれど、それでも諦めなくて頑張るとか、そういうところが日本の漫画の特殊なところだと思います。『スーパーマン』だったら、いきなり強くて、いつも勝って、元気なままで終わりでしょう(笑)。そういった漫画を見慣れた人ほど、日本の漫画が斬新に見えるのでしょうね。
■日本アニメのイベントは大人気
――フランスでは、日本の漫画・アニメのイベントも開催されています。
ジェレミ:荒木伸吾先生や小松原一男先生、高田明美先生などが参加していた「CARTOONIST」というイベントが大人気でした。これは、私が初めて参加したアニメメインのイベントですね。その後、2000年に始まった「Japan Expo」はだんだん規模が大きくなっていき、日本のアニメ関連のイベントが増えてきました。
――Japan Expoの画像を見ると、コスプレに親しんでいるフランス人がたくさんいます。
ジェレミ:アニメ好きなフランス人は、コスプレが好きな人も多いですね。コスプレイヤーは年々増えています。そして、Japan Expoの成功を見て、スペイン、イタリア、ドイツなどの周辺の国でも日本のアニメ関連のイベントが広がっています。
――フランスではすでに、親子で日本のアニメが好きという家族が増えているそうですね。
ジェレミ:今、20歳の若者は、お父さんからアニメを教えてもらって、アニメファンになった人も多いですね。
■フランス人観光客を見かけない日はない
――アニメや漫画以外にも、日本文化の注目度は高いのでしょうか
ジェレミ:注目度は非常に高いですし、日本の文化全般が大人気だと思います。お酒、ウイスキー、生け花、和食、あとは日本の絶景も人気ですね。フランス人は日本文化に深い関心を持っています。日本を訪れたらお寺や神社も見に行きたいし、高尾山や富士山も人気です。
――日本人として凄く嬉しいです。
ジェレミ:今や、池袋でも秋葉原でも、フランス人観光客を見かけない日はないほどです。大阪に住んでいるフランス人の友達からも、「大阪ではフランス語をどこでも聞くよ!」と言われました。
――お寿司屋さんを訪れるフランス人もたくさんいます。
ジェレミ:フランスに和食の店が多くなっているので、注目されているのでしょう。ただ、フランスにある和食の店はおいしくないんですよ(笑)。だから、日本を訪れたフランス人が日本で和食を食べると、必ず感動してしまうと思います。「フランスではもう食べられないよ!」と言い出すほど、日本にはおいしいお店が多いのです。