『金田一少年の事件簿』殺人事件の重さを伝える、悲しきエピソード
無意味に殺害された「天草財宝伝説殺人事件」の4人
また、「天草財宝伝説殺人事件」に登場した最上葉月も、心に残こる悲しき被害者だ。最上は一とも交流が深い、いつきの元恋人。天草財宝探索をキッカケにいつきと再会し、最初は険悪な雰囲気だった。
しかし、次々と巻き起こる事件で“吊り橋効果”が発動したのか、2人は良い雰囲気になる。海辺でいつきといちゃつく中、トレジャーハンターの若者・赤門秀明の死体を発見。せっかくのラブラブムードをぶち壊されただけでなく、最上の悲劇は続く。悲しいことに最上は4人目の被害者となる。しかも、犯人・和田守男の手によって罪も被らされそうになる、というとても悲惨な殺され方だった。
ちなみに、最上始め、赤門なども和田の恨みを買ったわけではなく、和田の娘に蔵元コンツェルン社長の遺産を相続させるために殺された。しかも、蔵元コンツェルンは程なくして倒産。娘に相続させるべき遺産もなくなり、自分は何のために人殺しにまで手を染めたのか、と落胆する和田の姿が印象的だった。
一応、和田は私利私欲を満たすためではなく、病気に苦しむ娘の手術費のために金がほしかったという。結果的に、一のおかげで娘は無事に手術を受けることができたが、「父親が罪なき4人を殺した」という十字架を背負わされた娘もいたたまれない。
当然、罪のある人間なら被害者になってもいい、という話ではないが、罪のない人々が犠牲になるのはやはり心が痛む。冒頭にも書いたように、作中で続発する「殺人事件」に読者が慣れてしまわないためにも、必要なエピソードなのだろう。