【4月発売BLコミックレビュー】『大魔導師さまのお世話係になりまして』『CANIS-THE SPEAKER-』など新生レーベルに勢い

4月発売BLコミックレビュー

『CANIS-THE SPEAKER-』
(ZAKK/バンブーコミックス 麗人セレクション/竹書房)

 帽子屋を営む沓名聡とワケあり青年・柏葉リョウが、雨の日に思いがけない出会いをし、惹かれ合っていく様子を描いた『CANIS-Dear Mr.Rain-』『CANIS-Dear Hatter-』。「CANISシリーズ」としてファンから支持されていたこの2作が2021年、新装版として再始動した。そしてこの2作に登場していた闇の世界を生きる男たちを主役に据えた『CANIS-THE SPEAKER-』が、この4月に新装版となって発売された。「Dear Mr.Rain」「Dear Hatter」でリョウと深く関わりのあった危険な男たちによるクライムサスペンスだ。

 アメリカの孤児院の同室で兄弟同然に育ち、ずっと一緒にいることを望んでいたノブとハルとサム。彼らは遊びの延長で孤児院の秘密を知り、シスターから目をつけられ、全く望まない形で引き裂かれてしまう。そして時間は過ぎ、大人になった彼らはそれぞれの道を生きるなかで、再び孤児院の真相に迫っていく。

 同作は、「Dear Mr.Rain」「Dear Hatter」のスピンオフだ。いちファンとしては、前2作からのつながりを感じる場面に唸らされる部分も多分にあるのだが、「THE SPEAKER」単体でも十二分に楽しめると思う。孤児院を取り巻く闇の正体をはじめとするあらゆる伏線が、物語のあちこちにちりばめられているため、きっとページをめくる手が止まらなくなるだろう。3人が互いを守ろうと危険をかえりみず暗い道へと突き進んでいく様子も、スリル満点だ。

 「THE SPEAKER」の新装版は、最終的に4巻までを予定しているという。シリーズすべてが世に出る前のこの期に、新たな漫画との出会いを求めている人はもちろん、シリーズの旧版が手元にある人も新装版で揃えてみてはいかがだろうか。

BL新生レーベルに感じる可能性

 毎月のように各レーベルから数々の名作が誕生し続けている、BLコミックス。2022年4月はなかでも、2021年3月に創刊したばかりの新生「&arche(アンダルシュ)」の作品が印象に残った。

 同レーベルを立ち上げたのは、小説や漫画の投稿機能を備えたサイトを運営するアルファポリス。サイトへの投稿から漫画家デビューしたという話も珍しくなくなってきた昨今、同レーベルからもBL界を騒がすような新たな才能が続々登場する可能性を感じずにはいられない。

 これまでのBL界を支えてきた多くのレーベルに新生レーベルの風が吹くことで、ますますボーイズラブの世界は広がりを見せていくだろう。

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