努力は才能を凌駕するか 胸を熱くする『アイシールド21』雪光学の葛藤と成長
執念のタッチダウン
雪光は関東大会初戦の神龍寺ナーガ戦で初出場を果たすが、そのタイミングは劣勢も劣勢。前半終了時に32-0という絶望的な大差をつけられ、後半開始早々にオンサイドキックをなんとか成功させて攻撃権を獲得。それでもラストチャンスとしか言えない絶体絶命のシチュエーションである。
いざフィールドに立とうとするも、その熱気に気圧され、ベンチで戦況を見つめている時とのプレッシャーの差に激しく動揺する雪光。さらには雪光の実力を探るために実力者の一休がマークにつき、関東屈指のコーナーバックのプレッシャーに圧倒されて全く活躍できない。しかし、出場から3プレー目、彼の強みである頭脳を活かした“オプションルート”を披露。裏をかいた動きも一瞬で追いつかれるが、執念のダイビングキャッチを見せ、この試合初のタッチダウンを決めた。神龍寺相手にようやく反撃の口火を切り、それが雪光のタッチダウンという熱すぎる展開に涙が止まらない。
このプレーをキッカケにセナは阿含、モン太は一休という強者に食らいつくことができたが、雪光のプレーが士気を高めたことが大きいだろう。雪光はこの試合から優秀なレシーバーとして、策士として、モチベーターとして、なにより戦士として活躍することになる。
身体能力が高いとは言えず、アメフトどころかそもそも運動の経験がない。それでも、一途な努力でトッププレイヤーたちに食らいつき、ときに才能や経験を凌駕する輝きを見せた雪光の姿は、いまも読者の心に強く焼き付いている。