『ミステリと言う勿れ』整のおしゃべりはなぜ人を虜にする? “人に伝わる話し方”を考察
整の口癖と関連する過去
整はおしゃべりを始める際に「常々」という単語をよく口にする。この単語のあとには「~と思ってて」などの動詞が続くため、整が日頃からに対し思いを様々なものに対し巡らせていることが見受けられる。
5巻「episode8-4 カエルの炎描」では、整が小さかったころのワンシーンが描かれた。家に帰りたくなく、図書館の庭でぼんやりと過ごすことの多かった幼少期の整。そんな整にとある女性は言葉を贈る。
当たり前にそこにあるもの/ある言葉
なぜそうなのか/誰が決めたのか/いっぱい考えてみるといいよ
そしてそれを/誰かに話そう
日頃から様々な事象に対し考え、思いを抱く整の原点は、おそらくこの女性との出会いが大きく影響しているのだろう。
「episode1 容疑者は一人だけ」において、大隣署・薮鑑造警部補に殺人容疑の証拠を突き付けられた整は、珍しく口を閉ざした。しかしその翌日、整は薮警部補に多くの言葉を投げかけ、彼が秘密にしていた事実と、隠していた本音を引きずり出すのだった。
藪警部補の行動変容を生んだ背景には、口を閉ざし、思考を巡らせて生まれた数多くの言葉の存在が大きく影響しているはずだ。話し方の“質”もさることながら、日常のなかで目にする事実に対し、思考を巡らせた“量”こそ、整のおしゃべりが人の心を掴み、解きほぐす要因なのかもしれない。