坂口健太郎が考える、エゴを捨てて“流される”ことの強さ 「本当は空っぽのリュックで旅立てるはず」

坂口健太郎が考える、“流される”強さ

俳優としても飛躍の年

――坂口さんは読書家としても知られていますが、言葉を集めるうえで影響を受けた作家さんはいますか?

坂口:なんだろう。さっきの童話じゃないですけど、わりと古典が好きなので、そこから引っ張ってきていることのほうが多い気がするな。あとは、歌人の穂村弘さんが好きで、対談をさせていただいたこともあるんですけど、そのとき一緒に短歌をつくった経験は影響している気がします。誰かが発した短い言葉を穂村さんの感性で読み解いていく過程もすごくおもしろくて、それも「委ねたい」とか「断定したくない」って思いにも繋がっているかもしれません。

――ちなみに、寒い冬の時期に読むおすすめの本はありますか?

坂口:『さむがりやのサンタ』という絵本はおすすめです。クリスマスは過ぎちゃったけど(笑)。大人になってから、子どものころに好きだった本を読みかえすと、新しい発見がある……とまではいかないですけど、当時の感情を思い出したり、心地のいい瞬間をとりもどしたりすることができるんですよ。この絵本じゃなくてもいいから、ぜひためしてみてください。

――フォト&ワードブックに話を戻すと、巻末インタビューでは〈流されず動じない鈍感力みたいな良さをもっていると思っていた〉とおっしゃっていた一方、〈流されてみて初めて得をした〉という言葉も写真に添えられていたのが気になりました。

坂口:流行に流されない、筋の通った強さも生きていくうえでは必要だと思うんです。でもそのせいで頑固になってしまうと、豊かにはなれないような気がしていて。とくにお芝居をするときは、自分の持っているものだけで勝負すると、小さくまとまって終わってしまう。だけどゆるく構えておくことで、自分が用意していた演技とはまた違うアプローチを受けいれて、新しいお芝居をすることができるんです。一緒にお芝居をしている相手の生み出した流れを、自分のエゴでふんばって逆らうのではなく、その波に乗って相手と同じ場所に立つ。そのほうが正解なんだ、ってことを、仕事を通じて学んだから出た言葉だと思います。知らないこと、わからないことは、いったん自分の中に享受したほうが得だし、「なんか違うな」って思ったらまた元の場所に戻ればいい。流されてみないとわからないことってすごくあるな、というのは、僕の実感としてあります。

――『おかえりモネ』の出演をはじめ、2021年は俳優としても飛躍の年でしたね。注目を集めている実感はありますか?

坂口:映画『ヒロイン失格』や朝ドラ『とと姉ちゃん』に出演していた2015~6年ごろは、僕の存在を一気にみなさんに知っていただいて嬉しい反面、自分自身を扱いかねてもいたんです。爽やかな好青年というパブリックイメージが先行して、僕の知らない「坂口健太郎」がどんどん育っていくことに対する恐怖がありましたし、求められていることに応えなきゃいけないとか、背負うものが大きくなって、自分で自分にメッキを貼り続けるような感覚も続いていました。本当は空っぽのリュックで旅立てるはずなのに、どんどん自分で砂を詰めて、身軽じゃなくしていたなと、ふりかえってみて思います。でも今はそのリュックを捨てて、「お前、売れてラッキーだなあ」って「坂口健太郎」に対して客観的に接することができるようになった。それは、先ほども言った「なんでもいい」って感覚を得られたからだと思います。

――フォト&ワードブックの撮影中、坂口さんは三十代を迎えました。これから先、どんな十年を過ごしたいですか?

坂口:それが、あんまり実感がなくて……。コロナ禍でいろんなものがストップしていたせいで、二十代最後の高揚を味わいきれないまま終わってしまったんですよね。30歳を迎えた去年の7月11日も、まだ気軽に外出できる情勢ではなかったし、想像していたよりも新しいスタートを切った感覚を得られなかった。まあ、逆に今しかつくれないフォト&ワードブックになってラッキーだった、とポジティブに捉えてはいますけど……。ただ、「観てもらう」ことに対して前よりは貪欲になったような気がしています。映画『仮面病棟』も『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』も公開時期がちょうどコロナ禍にあたってしまったので、なかなか劇場にお越しくださいとは言えなかった。作品は、決してあたりまえに観てもらえるものではないのだと痛感するなかで、それでも芝居し続けることの意義……というと大袈裟ですが、誰に何を届けることができるのかということを改めて考える時間でもありました。これからもよりいっそう、観る人の心に響くものを表現できたらいいなと思っています。

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■スタッフクレジット
スタイリスト:壽村太一
ヘアメイク:廣瀬瑠美

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