生田絵梨花、22歳の写真集『インターミッション』が名作たる理由 その柔らかな奥行きを考察

生田絵梨花『インターミッション』評

 生田絵梨花という人物を通して、私たちは同じ世界を別の視点で見る。そんな体験ができるのが、中村和孝撮影による生田絵梨花の写真集『インターミッション』だ。彼女の22歳の誕生日である2019年1月22日に発売されてから、すでに30万部以上のセールスを記録。Amazonのタレント写真集のランキングでは、発売から1年半以上を経た現在も上位にランクインしている。

 生田絵梨花はドイツのデュッセルドルフで生まれ、3歳でピアノを始め、中学生でグランド・ピアノを与えられた。小学生でバレエを習い、ミュージカルの初舞台にも立つという育ちの良さ。ミュージカル女優を夢見ていた生田絵梨花と私たちは、もし彼女が乃木坂46のオーディションを受けてアイドルになっていなかったら、何の接点も持たなかったかもしれない。

 2016年の最初の写真集『転調』に続く2冊目の写真集『インターミッション』は、ニューヨークで7日間をかけて撮影された。朝はテディベアを抱きながら目を覚まし、にぎわうストリートを歩き、アイスクリームを食べ、レストランでディナーに舌鼓を打ち、夕暮れの河原で風を浴びる。夜の路上での眠たげな笑顔もキュートだ。『インターミッション』での生田絵梨花は、かつて「型にはまりやすいタイプ」だと悩んでいたというのが嘘のように豊かな表情を見せる。

 生田絵梨花のバックボーンも随所で踏襲されている。楽譜を抱えてストリートを歩き、ミュージカルの先生のもとへ。その先生のピアノに合わせて歌のレッスンをする。バレエを踊るシーンもある。

 私は『インターミッション』が発売された当時、生田絵梨花が出演していたミュージカル『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』を東京芸術劇場で見た。そこでの彼女は圧巻としか言いようがなかった。共演していた多くの名優たちと並んでも遜色がない。乃木坂46としての生田絵梨花と、ミュージカル女優としての生田絵梨花が、頭の中でうまくイコールで結びつかなかったほどだ。

 ミュージカルを愛する生田絵梨花の姿をも投影しているのが『インターミッション』である。冒頭で彼女がスキップしながら向かう先は、ミュージカル「ハミルトン」を上演中の劇場なのだから。

 そうした生田絵梨花のバックグラウンドや現在の活動を投影しているところにも『インターミッション』の真価はある。ミュージカル女優としての実力をもってして、彼女は乃木坂46をルッキズムのみでは語りえないものにした。『インターミッション』は、肌を見せている写真の多さがファンを驚かせたが、同性からの支持も強かった。それは生田絵梨花が、親近感がありながらも憧憬を抱かせる存在だからだろう。

 私は編集者として、生田絵梨花に取材をする機会も得た。「どんな写真を撮ろうか?」と考えたときに頭を抱えたのは、想像しうるすべての写真のパターンを網羅しているのではないかというほどのバラエティを『インターミッション』が誇っていたからだ。たとえば池でボートを漕ぐシーン。普通なら井の頭公園で撮影するようなシーンが、ニューヨークで撮影されているという事実に、『インターミッション』の持つ「厚み」を痛感させられたのだ。

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