関東連合・柴田大輔がフィクションに与えた影響とは? ミニマルな物語を通じて描き出された、暴力の内面化
心の闇と犯罪や暴力との結びつきは、文学や社会学の領域で長いこと議論されてきたテーマでもある。後年、工藤明男は本名である柴田大輔の名義で『酒鬼薔薇聖斗と関東連合』を出版した。神戸の連続児童殺傷事件と関東連合とがどうして繋がるのか。一見するとこじつけでしかないけれど、少なくとも柴田(工藤)にとっては切実なモチーフだったのであろうことが『いびつな絆』の時点で既に暗示されている。
今日、反社(反社会的勢力)の一部である半グレの脅威は『いびつな絆』が出た頃と比べても決して衰えたわけではない。何らかの事件が報じられ、耳目を集める機会も多い。そうした現実が反映されてか、半グレを題材にしたフィクションも増えており、身近になってきている。実際、『ヤングチャンピオン』や『ヤングキング』といったアウトローものに強いマンガ誌をめくると半グレを描いた結構な数の作品が目に入ってくるはずだ。それらの中には『いびつな絆』とのシンクロニシティを感じさせるものもある。ディテールの部分はもとより、狭い関係の中で物語が繰り広げられていたりしているところなどがそうだろう。ヒット作を例に挙げるなら『東京卍リベンジャーズ』において、目上や目下の関係ではなく、特定の世代で区分されたチームの構成なんかも関東連合のようだといえる。
柴田大輔 a.k.a.工藤明男の『いびつな絆 関東連合の真実』が出たのは2013年のことだが、しかし、上記した点を踏まえるに2022年の現在から振り返ってみてもまだそのアクチュアリティは失われていない。一つの問題提起として生きているのではないかと考えさせられるのである。