小学生に大人気の「イタリアンブレインロット」って? “意味不明なのにクセになる”言葉の正体

小学生に大人気イタリアンブレインロット

 小学館「JS研究所」「コロコロコミック研究所」が実施した「2025年小学生年間トレンド調査」結果を発表した。中でもひときわ目を引くのが、「イタリアンブレインロット」である。大人からすれば「一体どういう意味?」「どこから来た?」と首をかしげてしまうが、小学生たちにとっては日常的に使う“ノリ言葉”として定着しつつある。この謎めいたワードの正体と、いまの小学生文化との関係性を読み解いてみたい。

■そもそも「イタリアンブレインロット」とは?

 「Italian(イタリアの)」「Brain(脳)」「Rot(腐る)」を直訳すると“イタリアの脳腐れ”という奇妙な言葉。 生成AIで作られた奇妙な動物が、ナンセンスな語りや歌やダンスをする動画と、そのキャラクターたちの総称だ。きっかけはTikTokで流行した特定の音源・動画ミームで、語感の強さとテンポの良さが“口に出したくなるワード”として広まり、日本語圏でも小中学生の間で爆発的に普及した。

#イタリアンブレインロット

 小学生の間では「テンションが上がったとき」「友だち同士でふざけるとき」などに使われていて、一種の“儀式的合言葉”ともいえる。意味がないからこそ、使うハードルが低く、誰でも受け入れやすいのも特徴だ。

■SNS時代の“意味なき言葉”の強さ

 従来の小学生の流行語は、アニメ・ゲーム・YouTuberなど、明確な「推しコンテンツの文脈」のあるものが多かった。しかし「イタリアンブレインロット」には、特定の知識もストーリーもいらない。いまの子どもたちが求める“中立で共有可能な言葉”として機能しているのかもしれない。スポーツ系男子でも、キャラクター好きの女子でも使える。価値観の違いを超えて、同じテンションで盛り上がれる“万能ワード”になっている。

 短く、語感が強く、リズムがある。これはZ世代よりさらに下の「アルファ世代」が好むミームの特徴とも言えるだろう。強い語感のループは、ゲーム的な快感を生みやすい。言葉を共有しているだけで“仲良しグループ”の証明になる。いまの小学生にとって、SNS的な共通言語はリアルの学校生活にも直結している。

■SNSミームが文化を変える

 「イタリアンブレインロット」は、意味のない言葉が流行語になる典型例だ。背景には、子どもたちの遊び方がYouTubeやTikTokに大きく依存している現状があり、かつての「アニメの決めゼリフ」や「お笑い芸人のギャグ」の役割を、短命のインターネットミームが担っている。また、教師や親が理解しづらい“翻訳不能さ”も、流行を加速させた。大人には説明しづらいからこそ、子どもたちの間でだけ成立する秘密めいた連帯感が生まれる。

 こうしたネット発ワードは、数か月で姿を消すことも珍しくない。一方、小学生の記憶に残る“同学年だけの文化”として積み重なっていく。今回の「イタリアンブレインロット」も、日常風景の中で使われた記憶が、世代ごとのミーム史として残っていくだろう。

 言葉の意味よりも、友だちと盛り上がった空気そのものが価値になる。いまの小学生たちが好む流行語の形は、SNS時代ならではのコミュニケーションの多様性を示している。

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