『恋と嘘』ムサヲが語る、2パターンの結末を迎えるまでの道程 「読者の方々には感謝してもしきれない」

『恋と嘘』エンディングを迎えるまでの道程

大学で漫画を専攻

──本当にお疲れ様でした。ムサヲ先生ご自身に関してもいろいろと伺いたいんですが、漫画はもともとお好きだったんですか?

ムサヲ:連載が忙しくなるまではめちゃくちゃ読んでました。以前は月に200冊くらい読んでいて、それが漫画を描くうえでいいインプットになったなって思います。この作品っていうことで言うと、田村由美先生の『7SEEDS』と乃木坂太郎先生の『医龍 Team Medical Dragon』(原案・永井明原案、医療監修・吉沼美恵)が人生の書で、打ち合わせでも「鬼頭先生がこう言ってたので」って引用しちゃうんですよ(笑)。漫画を描くのがしんどいときに、“『7SEEDS』はこんなに面白いんだから頑張らなあかん!”って思ったりもして。同じように『鋼の錬金術師』、『進撃の巨人』、『HUNTER×HUNTER 』も漫画が好きだっていう気持ちを後押してくれる作品で大好きです。進撃は1〜2巻が出てすぐの頃、あまりに人に勧めたくて、友達5人と遊園地行った時に持参してアトラクションの待ち時間に全員に読んでもらいました(笑)。

──絵は小さい頃から描かれていたんですか?

ムサヲ:普通に遊びの一環で休み時間に自由帳に描くくらいだったんですが、小学校のクラブ活動でイラストクラブに入ってからは、競走馬の模写ばっかりしていました。きっかけは『ゼルダの伝説』のエポナがすごく好きで、馬って可愛いなあと家を探したら初代『Winning Post』があってまんまと競走馬にめちゃくちゃハマって。もともと動物は好きで、飼っていたセキセイインコをよく描いたりはしてたんですが、クラブでみんなが普通のイラストを描いてる中、ナリタブライアンを描いてましたね。今は、『ウマ娘 プリティーダービー』にめちゃくちゃハマっています。でもブランクがあるので、“牝馬三冠ってエリザベス女王杯じゃないの!?”という状態です(笑)。

 ──競走馬とはまた意外なところでした。そこから漫画を描き始めたきっかけは?

ムサヲ:もともとお話を考えるのは好きで、小さい頃のごっこ遊びの設定もめちゃめちゃ凝ってたんです。幼稚園の頃のおままごととかもお父さん役お母さん役をしたがる子が誰もいなかったら、まず両親が不在の理由から決めないと納得できなくて。

 小学校に入ってからの人形遊びとかも4時間目で終わって、友達と家についたら2時間くらい設定を考えて、16時くらいからようやく「じゃあこの設定とキャラで遊ぼうか」って。そんな感じだったのですが、小6の時に『HUNTER×HUNTER』とクラピカに出会ってしまって……そこからはオタクの道を進んでいきましたね。クラピカは好き過ぎて全然描けなかったですけど(笑)、いつか上手に描くためにもっと上手くなりたいと思ってよく描くようにはなりました。

 そうしていろいろと漫画を読むようになってから、自分でもお話を書きたいなと思うようになったんです。それで漫画は難しそうだから小説を書いてみたんですよね。中学生が考えそうなバッドエンドものだったんですが、最後にすごいどんでん返しがある話で、友達に読ませたら褒めてもらえて。何かを完成させて人に見てもらうって楽しいなって、そのときの体験で覚えたんですよね。大学は京都の嵯峨美術短期に進んだのですが、漫画分野があって、そこで自分のやりたいことは漫画かもしれないと思って描き始めました。

──大学で漫画を専攻したのが大きなきっかけだったんですね。

ムサヲ:授業で課題を出されて、その締め切りに合わせて描くという経験が大きかったですね。同じ志を持っている子たちが集まって一緒にやっててそれぞれどんな漫画が好きかとかどういう話を描きたいかとか話したりして、それも楽しかったです。1回生の終わり頃、進級制作で初めて描いた32ページの漫画が「あともう一歩で賞」のようなところに入って、そこでもう少し本腰入れてやろうと思いました。

 そして2回生のときに行った持ち込み旅行で、出版社の編集さんから名刺をもらって、本格的に漫画の道を目指すようになったんです。

──今後こういう作品に挑戦してみたいというものがあったら教えてください。

ムサヲ:『恋と嘘』で哀しくて切ない顔ばかり描いていたので、かわいくて明るい笑顔の作品を描きたいですね。実際そういう話を描くかは全然わかりませんけど、とりあえず涙を浮かべた笑顔や切ない表情は本当にもう描き飽きました……(笑)。最終巻の表紙で明るい表情を描いたときに、何の含みもないかわいらしい笑顔ってあらためていいなって思って。次回作は、苦しい顔をあまり描かなくて済む作品にしたいです。

──最後に、読者にメッセージをお願いします。

ムサヲ:特殊なスタイルの最終巻でしたが、あたたかく受け入れて最後まで読んで下さった読者の方々には感謝してもしきれないです。次も楽しんで貰えるような作品を届けることができるよう頑張ります。本当にありがとうございました!

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