教師と女子高生によるローテンションラブコメ漫画『墜落JKと廃人教師』がずるい
さらっと道化を演じる、ずるい大人
JKが落ち込んでいるとき、あとちょっと勇気が出ないとき。彼女の負担が減るように、灰仁はさらっと道化を演じて(少しかっこつけもあるだろうが)励まし、見えないところでフォローして、優しい嘘をつく。普段の灰仁は目が死んでいてニコチン中毒(でもたばこ吸う姿はかっこいい)だし、堂々とサボるなど、本当に教師なのか疑わしい場面もある。しかしだんだんと、ぐうたら教師に見える彼こそが、誰よりも教師らしく、JKの道標になっていることに気付かされる。一見、JKのほうがだいぶ大人っぽく感じるが、物語を読み進めるごとに、灰仁のほうがやっぱり数段、上手(うわて)だと思うのだ。
教師と生徒という関係を守り、お互いが一線を越えないようにしている2人は、月並みな言葉や行動で好き、愛しいという気持ちを表現することがほとんどない。ときには、灰仁は冗談めかして「愛してる」「結婚しよう」などと軽率に言うこともあるが、それもJKの気持ちを和らげるためにあえてしているものだ。言葉で確認し合うことも大切だが、お互いに相手を思いやり、その意図するところを汲み取ろうと努力を重ねる中で生まれる絆もある。灰仁の本当の思いをだんだんと理解し、「私もなにかできることがあれば」と心を重ねていくJKの姿も、見ていて可愛らしい。
個人的にずっと気になっているのは、灰仁が他の生徒のことは名前やあだ名をつけて呼んでいるのに対し、JKはずっとJK呼びなことだ。不用意に近づきすぎないための防衛線かもしれないが、筆者としては「扇言」「仁さん」と呼び合う日が来てほしいなぁと思わずにはいられない。
■書誌情報
『墜落JKと廃人教師』1~12巻(花とゆめCOMICS)
作者:sora
出版社:白泉社