教師と女子高生によるローテンションラブコメ漫画『墜落JKと廃人教師』がずるい

『墜落JKと廃人教師』がずるい

 風が強く吹く屋上。フェンスの外側に立ち、いまにも飛び降りようとしている女子高生の落合扇言(おちあい·みこと/以下、JK)。すると、背後から「禁煙しよっかなぁ」と煙草をふかしながら語りかける声が。物理教師兼副担任の灰葉仁(はいば・じん/以下、灰仁)だ。

 何気なく手にとった『墜落JKと廃人教師』(花とゆめCOMICS/白泉社)だったが、物語はとんでもないところからスタートしてしまった……。もうこれは読み始めてしまった筆者の責任として、この2人の行く末を見届けなければならないと直感した。灰仁はこう続ける。

「とりあえずどうしたんだ 先生に話してみろよJK」

 筆者もそう思う、とりあえず冷静になれと(自分も)。成績優秀で真面目、落ち着いて大人びた雰囲気のある“JK”は、飛び降りようとしていた理由をしぶしぶ灰仁に話す。それに対し灰仁は、ぽつぽつと自分の失恋話や校長に呼び出されて土下座した話、物理教師らしく落下時間の計算話を語る。そして、飛び降りをやめたほうがいい理由として、「一番は 昔ここで失敗した奴がいるってことかな」とも。極めつけはこのひとことだ。

「死ぬ前に俺と恋愛しない? 落合扇言」

 この言葉に驚いて落ちそうになるJKを、ぐいっと力強く引きあげる灰仁。

(まんまとはめられました これがいわゆる吊り橋効果? なんてずるい大人)※JK心の声

 筆者もこのJKの言葉どおり、まんまとはめられた。いや、筆者がJKより先に灰仁に落ちたかもしれない(笑)。この2人の学校生活? 関係?は一体どうなることやら……。

2人の過去と、つかず離れずの不思議な関係

 教師と生徒とのラブコメは、少女漫画ではよくあるテーマだろう。年の差、許されない禁断の恋……。ここ一年ほど少女漫画ばかり読んでいる筆者にとっては、正直ちょっとお腹いっぱいである。だが、本作はそんな枠組みではおさまりきらない、予想外な展開で少しずつ進んでいく。

 まず印象的なのは、2人ともいわゆる“陰キャ”で思考がネガティブ、ローテンションなことだ。少女漫画のカップリングとして非常に珍しく、2人ともだいぶ心に闇を抱えているようで、読み始めたばかりの頃は鬱々した展開で進むかと思っていた。だが実際は、ほんわかとした学校生活や日常シーンもありつつ、コミカルでクスクス笑えるようなギャグ要素もあり、暗くなりすぎずにテンポよく読み進めることができる。灰仁のJKに対する独特なアプローチはもちろん、教師という立場を考えて、気持ちを素直に表現できないJK……という、王道的なやきもきシーンも新鮮に見えてくる。

 もっとも、2人のキャラクターに象徴されるように、本作はほんわか展開ばかりではない。どうやら2人の過去にはいろいろあるようだ。何を抱えてこれまで生きてきたのか、少しずつ紐解かれていくわけだが、このことで2人の見方、過去のセリフの印象が大きく変わるとさえ思う。お互い、ときには重たすぎるほどの感情が渦巻きながらも、相手を想い、支える。こうした甘さとしょっぱさの刺激ループ、2人のつかず離れずの不思議な関係が筆者は好きだ。

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