王宮モノから異能ファンタジーまで 正月、日常を忘れて読み耽りたい少女漫画3選
『クイーンズ・クオリティ』最富キョウスケ(16巻まで発売中)
幼い頃の記憶がなく、身寄りのいなかった文(ふみ)。人の心の中にある穢れを払う“ココロの掃除屋”を家業とする堀北家に居候することになる。しかし、「呪いの娘」と言われ続けていた文は、実は生まれ持って人々に絶大な力を及ぼす女王(クイーン)だったことがわかる。覚醒した文と堀北家当主補佐である同い年の玖太郎との運命は……。
「悪意とか制御できない黒い部分とか誰にでもある」
「ひとに言えないどうしようもない、今にもあふれて暴走しそうな感情とか誰にでもある、俺にもある」
玖太郎が文に言ったセリフだ。掃除屋は人の心の中にある穢れを払うために、まず自分の感情のコントロールができ、心が安定していないといけない。筆者もついひとりで物事を抱え込み、頑張りすぎてしまう方だが、そんななかでも本作を読むと、心が穏やかになるセリフが多い。
隠し通さなければならないもどかしい恋心とともに、ストーリーが進むにつれ、2人は定められた過酷な運命と悪意に立ち向かわなくてはならない。ダークファンタジーとして、どんどん闇の深さが増していき、恐怖や苦しみも募っていくなかで、今後どうなっていくのか……と、ハラハラさせられるが、読んでいて暗くなりすぎないのは、「何があっても絶望だけはしない」と決めて自ら歩み出す文のパワフルさと、シリアスな戦いが続くなかでも展開されるコミカルなやりとりのおかげだろう。また、読み終えると「あ、掃除しよう」という気分になるので、大掃除のシーズンにはぴったりかも(?)しれない。
なお、『クイーンズ・クオリティ』を読むにあたり、まずは前作の『QQスイーパー』(3巻完結)から読むことをおすすめする。じっくりと思索に耽りやすい長期休暇だからこそ、どこまでも堕ちてしまいそうな精神世界の深淵を、覗いてみるのもいいだろう。
……さてさて。筆者も年末年始のこの時期に、コタツにもぐってこの3作品を読み返そうかと思う。ぜひそれぞれの楽しみ方で、物語に触れてみてほしい。