王宮モノから異能ファンタジーまで 正月、日常を忘れて読み耽りたい少女漫画3選

 2022年のお正月、仕事の人も家の事情で忙しい人も休みでのんびりする人も、こんにちは。年末年始のこの時期に、忙しい現実を少しでも忘れたい、連休でまとめて少女漫画をイッキ読みしたい人におすすめの少女漫画を紹介したい。

 今回紹介する作品の共通点は以下の通りだ。

・コミックスが15巻以上刊行されている、ボリュームのある作品
・ファンタジーや王宮/異国要素など、現実逃避できそうなジャンル
・恋愛要素だけではなく、ストーリー展開もおもしろい
・困難を乗り越えて成長する、芯の強いヒロイン(もちろん素敵な男性キャラも)が登場

『赤髪の白雪姫』あきづき空太(24巻まで発売中)

 薬剤師として暮らし、生まれつき赤い林檎のような美しい髪をした白雪。珍しい髪色を悪名高い王子に気に入られ、白雪は生まれ育った国を出ることになる。そして隣国の森で出会い、力を貸してくれた少年ゼン。実はクラリネス王国の第二王子でもあった。白雪は髪色のせいで人さらいに遭い、国や王宮の問題に巻き込まれるなど苦労もありながら、さまざまな人との出会いのなかで、自分の歩む道を自ら決め、人生を切り開いていく……。

 海や山、城下に広がる街並み、そこで暮らす人たちとその装い、出てくる食べ物など、異国情緒あふれる地で働く白雪たちをみていると、こちらまで心が躍る。ひたむきに生きる白雪とゼンのやりとりも、ゼンの側近たちとの関係もこの作品の魅力だ。

「赤ってのは運命の色のことを言うんだろ」
「今は厄介なだけでも案外いいものにつながってるかもしれないぞ」

 出会って間もない頃、ゼンが白雪に対して言ったセリフだ。ゼンは言葉や行動のひとつひとつから心に沁みわたる温かさ、優しさ、そして誠実さが伝わる。筆者がしんどいときに、ゼンのセリフがふと頭に浮かんだりするほどだ。

 本作は、飛びぬけて才能にあふれている誰かが、ひとりで引っ張っていくわけではなく、関わる人たちがそれぞれに知恵を出し合い、考え、協力して問題を乗り越えていくシーンが多い。純粋な気持ちで物事に取り組む姿勢は、心が洗われるようだ。少女漫画の枠組みでは収まらない、名作だと思う。前向きな気持で新年を迎えたい人は、ぜひこの機会にイッキ読みしていただきたい。

『暁のヨナ』草凪みずほ(37巻まで発売中)

 四龍という神龍伝説が伝わる高華王国。緋龍城で生まれ育った一人娘のヨナ姫は、珍しい緋色の髪を持つ。護衛を任されている幼馴染であるハク、ヨナが想いを寄せる従兄のスウォン、そして優しい父·イル王に大切に守られ、何不自由のない暮らしをしていた。しかし、ヨナの16歳の誕生日。彼女はすでに事切れたイル王を目にしてしまった。そこには思いもよらぬ陰謀があり……。

 小さなときから大切に育てられていたヨナは、父の死により国から追われ、突き付けられた過酷な現実に立ち向かうため、伝説に登場する四龍の戦士を探すためにハクと旅に出る。最初は信頼していた人に裏切られ、誰を、何を信じたらいいのか……というヨナの気持ちに感情移入して苦しく、切なくもある。だが、ヨナに付き添うハクが圧倒的にかっこいい。従者としての立場から身を挺してヨナを守る姿、気遣い、その覚悟……。

「髪を捨て剣を取り、この国を支えんと誰よりも強く生きている」
「ヨナ姫は、ここにいる」

 心も強くあらねばならなかったヨナが、一番に弱音を吐き出せる、背中を預けられる相手がハクだろう。ヨナ自身も武装してハクや四龍とともに戦い、王宮内の駆け引き、政治的なやりとりなどもあり、読み応えのある大河ファンタジーだ。ヨナとハク、そしてスウォンとの関係性、それぞれの本当の想いとは……。今後の展開にも注目で、未読の方はぜひ、この長期休暇で最新刊まで追いついてほしい。

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