『機械じかけのマリー』あきもと明希が語る、作画のこだわり 「言葉で説明しすぎず、絵で伝えたい」

『機械じかけのマリー』あきもと明希インタビュー

 漫画『機械じかけのマリー』(白泉社)は、元格闘家のマリーが、人間嫌いな大財閥の御曹司・アーサーのもとで、ロボットメイドとして住み込みのアルバイトを始めるところから物語が始まる。何よりも「嘘をつく人間が嫌い」なアーサーに対して、ロボットのフリをすることで”嘘”をついているマリー。しかしアーサーは、マリーが人間であると疑うこともなく、むしろ溺愛している。ますます”嘘”がバレるわけにいかなくなったマリーもまた、次第に、アーサーに対して特別な感情を抱くようになり……。

 ときに甘く、ときに切ない。王道ラブコメディのようでありながら、ギャグ要素もたっぷりな本作は、現在、少女漫画誌『LaLa』で連載中だ。この単純明快で奥深いシチュエーションは、どのようにして生まれているのだろうか。連載に至る経緯から、描く際のこだわりまで、作者のあきもと明希氏に話を聞かせてもらった。(とり)

特徴的なキャラクターの誕生秘話

『機械じかけのマリー(1)』

――本作の連載が決まるまでの経緯を教えてください。

あきもと:本作は、私にとって初めての連載作です。というのも、私は10年ほど前に漫画家デビューしてから、ずっと『LaLaDX』(『LaLa』の増刊号)で読み切りを描いていて。本作も、これまでの読み切りとして描き始めたものだったんです。まさか連載させていただくことになるとは、思ってもいませんでした。

――読み切り時代は、どのような作品を描いていましたか?

あきもと:本作同様、ギャグ要素強めのラブコメが多かったです。

――そうだったんですね。あきもと先生が影響を受けた漫画も、やはりそういったジャンルのものが多かったんでしょうか?

あきもと:影響ですか……。漫画が好きすぎて、いろんな漫画を読んできたので、コレという一冊が浮かびづらいですね。雑誌でいうと「りぼん」(集英社)を購読していました。友達と回し読みしていたので「ちゃお」(小学館)や「なかよし」(講談社)にも触れてきました。

 改めて思い返すと、少女漫画誌で連載していたギャグ漫画は、わりと好んで読んでいた気がします。例えば、亜月亮先生の作品とか。ギャグ漫画以外だと、種村有菜先生の存在も大きいですね。特に『神風怪盗ジャンヌ』が好きで。本作でも、マリーの設定が元格闘家となっていますが、基本的には女の子が戦ったり活躍したりする話が好きなんだと思います。

――なるほど。では、マリーというキャラクターが生まれた背景にも“”戦う強い女の子”への憧れがあったんでしょうか?

あきもと:そうですね。とにかくメイドの女の子が描きたかったので、メイドという設定にしたんですけど、せっかくなら“戦いもできる強いメイド”の方が魅力的かなと思いました。

――アクションシーンの描写も見応えがありました。大胆なコマ割りをされているのも印象的でしたし。もしかして、格闘技もお好きですか?

あきもと:いえ、格闘技自体はあまり詳しくありません。ただ、『007』や『ジョン・ウィック』などのアクション映画は大好きで。マリーが戦っている描写は、アクション映画の動きやテンポ感を参考にすることが多いですね。

――この流れで、本作中のあらゆる設定が誕生した背景をお聞きしたいのですが、大前提にある「人間がロボットのフリをする」という設定は、どこから浮かんできたんですか?

あきもと:本作を描き始めるずっと前から、“人型ロボット”はある種フィクションの定番ですし、だったら逆に“人型ロボットのフリをする人間”がいてもいいんじゃないかと思っていたんですよね。ボンヤリ構想していたことだったので、本作で形にできてよかったです。

――では、アーサーはいかがでしょうか。表では冷酷な御曹司でありながら、マリーの前では天然な甘えん坊になるというギャップが面白いです。

あきもと:それこそ、ギャップのある男性を描いてみたかったんですよね。メイドさんにデレデレしている御曹司っていうのも、なかなか見ないですし。

――ただアーサーは、自分が後継者になることを反対している人たちから、毎日のように命を狙われていますよね。最初はあまりの人間不信ぶりに驚きもしましたが、あれだけ襲われていたら、そりゃそうなるよなぁと(笑)。個人的には、回を重ねるごとに、いちばん共感するポイントが増えたキャラクターでした。

あきもと:本当ですか? ありがとうございます。独特なキャラ設定のなか、そういった人間味溢れる部分は小出しにしていこうと思っているので、引き続き注目していただけたら嬉しいです。

「マリー2」登場シーン

――楽しみにしております! そして外せないのは、マリーの代わりに作られた本物のロボットメイド「マリー2」。まさかロボットのフリをしているマリーに、対抗する本物のロボットキャラクターが登場するとは、思いもしませんでした。

あきもと:当初は連載が3話で終わる予定だったんですよ。そのタイミングで、マリーが屈するほどの敵キャラが登場したら面白い展開になる気がして。ですからマリー2は、最後だけに登場するラスボス的な存在だったんですよ。でも、ありがたいことに連載が続いたので、新たな敵キャラである殺し屋のノアが登場した際に、今度は助っ人として再登場させてみるのもアリじゃないかと。まさか、マリーやアーサーの仲間としてレギュラーメンバー化するとは、自分でも予想していませんでした(笑)。

――昨日の敵は今日の友じゃないですけど、再登場したときは不思議と嬉しい気持ちになりました。ロボットのフリをしているマリーと本物のロボットのマリー2。この対比がマリーの人間っぽさをさらに際立たせているのもいいですよね。

あきもと:そうですね。マリー2は本物のロボットである分、マリーよりもロボットとしての性能がいいですし、表情も変わらないですから。そういう意味では、すごく万能なキャラクターになりましたね。

常にアーサーの命を狙い続ける殺し屋・ノア

――最後は殺し屋・ノア。マリーをからかうために、毎回、頓知を利かせた罠を仕掛けてくる手強いキャタクターです。

あきもと:ノアはいちばん描くのが難しいキャラクターですね。もとは担当編集の方からいただいた案をもとに誕生させたキャラクターで、私もまだまだ未知数な部分があります。そのミステリアスなキャラ設定に辿り着けたのは、担当編集さんのご指導あってこそなので、今後はうまくそのキャラクターを活かしていきたいですね。

――そちらも期待しております。ちなみに今後、彼らに匹敵するほどの個性を持ったキャラクターを新しく登場させる予定はありますか?

あきもと:今後は、新キャラを増やすというよりも、ひとりひとりの魅力をもっと深掘りして伝えていけたらと思っています。さらに厚みのある作品にしていけるよう、頑張ります。

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