「ねぇ私綺麗……?」からはじまる怪異ものと男子高校生の恋物語 『口が裂けても君には』がかわいい
思ったより純度の高いラブコメでこそばゆい
本作は「少年ジャンプ+」で連載されており、ジャンルとしては少年漫画である。しかし、侮ってはいけない。最初からわりと純度の高いイチャラブがはじまるのだ。覚悟して読み始めてほしい。
例えば、みろくは契約のこともあるし、怪異ものの信憑性・プライドを失わないために、ことあるごとに紅一に対して怖がらせようと試みる。作中でも「私綺麗?」という口裂け女の有名なセリフが何度か登場するのだ。ところが当の紅一からは、「ダメだよ、いつまでもテンプレに頼っているようじゃ」「もっとバリエーションを増やしていかないと」と即ダメ出しされる。ぐうの音も出ないみろく。しまいには、「顔が可愛いやり直し」とか素直に思ったことを言う紅一の直球アプローチに素直になれず、照れて慌てるみろく。思わず読んでいる筆者も同様に照れてしまった。
本作の魅力は、なによりも、みろくと紅一がかわいいことだ……!
みろくが驚いた拍子に口が裂けすぎてしまい、顎が落ちないようにと紅一に糸で縫ってもらったり、「唇の感覚はどうなっているんだろう?」という素朴な疑問を持ちながら紅一が唇に触れたりしようとしてくる。「く、くっそ……こんなかわいい表現もあるのか……」と筆者は平伏した。
みろくは見た目も人間に近いが、それでも怪異ものとしての生活や価値観がある。一緒に暮らすことで、人間と違うところもある。しかしそれに対し紅一は、自分にとっての当たり前が相手もそうとは限らない、少しでも近づきたいと言うのだ。違うところをひとつずつ埋めていこうとする紅一に対し、みろくも強がりつつも歩み寄ろうとする。大事なことだからもう一度書いておくが、この作品は思っていたよりも純度が高いラブコメなのだ。1年後の2人ははたしてどうなっているのか、楽しみでならない。
■書誌情報
『口が裂けても君には』1~3巻(ジャンプコミックス)
※4巻は2021年12月3日発売
作者:梶本あかり
出版社:集英社