『僕のヒーローアカデミア』爆豪勝己はなぜ不動の人気No.1キャラに? 天才が葛藤の末に見出した道

『ヒロアカ』人気No.1の理由

 『週刊少年ジャンプ』が誇る大人気バトル漫画『僕のヒーローアカデミア』には、不動の人気No.1キャラが存在する。彼は過去に6度実施された人気キャラ投票にて、第1回以外の5回で圧倒的首位を守り抜いていた。そのキャラの名は爆豪勝己。主人公のライバルキャラでありヒール的側面があるにも関わらず、なぜここまでの人気を獲得できたのか。彼には他の登場人物とは一線を画す、素晴らしいキャラクター性があった。

※以下、本誌ネタバレを含みます。

 爆豪勝己は間違いなく天才だった。少年時代から身体能力に恵まれ、発現したのは超強力個性の「爆破」。絵に描いたようなガキ大将で、本人も自分が天才だと自覚している。そして彼は超名門の雄英高校に入学し、何不自由ない順風満帆なヒーロー人生を歩む……はずだった。爆豪のプライドは見下していた無個性の少年・緑谷出久の変化によって、簡単に崩れてしまったのだ。

 筆者は爆豪を見ていると、どうしても『NARUTO -ナルト-』のサスケを思い出す。学園イチの天才だった彼らは、学園イチの劣等生の猛追に多大な焦りを感じていた。そして大蛇丸の甘い言葉に耳を傾けたサスケは、深淵に身を落としてしまう。爆豪もヴィラン連合に拉致された際、闇墜ちのレールは丁寧に用意されていた。しかし彼は死柄木らの勧誘を悩むことなく蹴ったのだ。

 漫画に登場する天才はどこか危うさを抱えている場合が多い。才能で常にトップを走っていたのに、突如追い抜かれれば状況を受け止められないのは当然と言えば当然である。しかし爆豪はデクを認め、信念を曲げずに己と向き合い続けた。完全なモブだと思っていた彼の猛追を受けても努力し、真っ向から叩き潰すためにもがき続けたのだ。下だと見くびっていた人間の実力を認め、なお正面から立ち向かうのは簡単ではないというのに。

 たしかにサスケの場合はイタチとの因縁も絡んでいたため、まったく同じとは言えないだろう。しかしプライドが高く直情的な彼は、「脆い天才」を絵に描いたようなキャラだった。そんな爆豪がプライドをズタズタにされても葛藤し続け人間的に成長していく姿を、読者が応援しカッコいいと思うのは必然だ。彼のセリフは、「殺す」「クソ」などヒーローを志す者とは思えない言葉で溢れている。しかし見ている先はいつも「正義」であり、強く憧れた「ヒーロー」だった。

 またすべてに恵まれたいわゆる「才能マン」である彼は、頭脳も天才的だ。中間テストの成績は八百万、飯田に続く堂々の3位だった。また戦闘中に頭に血が昇っても平常心を失わず、本音であれば的確な分析のもとクラスメイトを素直に褒める姿勢も見せる。天賦の才で輝く天才キャラは、どの作品でも人気が高い。しかし天才キャラは1つの能力値が高ければ、他の能力値が著しく低いのがセオリーである。その中で強く実直で賢い爆豪は、人気を得ずにはいられない「ニュータイプの天才キャラ」と言えるだろう。

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