【漫画】もしも宇宙の片隅にコインランドリーがあったら? Twitterで話題『サテライト・コインランドリー』がおもしろい
ーーファンタジーなお話でありながら、お客さんの様子などから現実世界の空気も感じる作品でした。創作のきっかけを教えてください。
夏乃雨:私は物語をつくるうえで「日常生活の美しさ」を大切にしています。本作も日常生活の延長線上に存在するような世界観を意識してお話をつくりました。
またコロナ禍をはじめとする世の中の状況から、気持ちの沈んでいる方は多いと感じています。ふと空を見上げると、宇宙のどこかに「サテライト・コインランドリー」があるのかもしれない。そんな想像をしたくなるような、読者の方の気持ちが明るくなるようなお話になればと思い、ストーリーをつくりました。ただ、こんな世界があったらいいなという自身の思いも、作品に大きく反映されていると思います。
ーー物語の舞台としてコインランドリーを選んだこと、また「洗濯」を物語の題材とした理由を教えてください。
夏乃雨:コインランドリーは日常のなかに溶け込んでいながら、非日常的でノスタルジックな雰囲気が漂っている空間だと感じています。私とよよはちさんが互いにノスタルジックな雰囲気が好きであるため、本作の舞台にコインランドリーを選びました。
また洗濯をテーマにした理由として、心の洗濯になるようなお話をつくろうと思ったからです。読者の方も読んだ後に気持ちがさっぱりするような作品になったらいいなと考えています。
ーーデフォルメされたキャラクターのデザイン、そして登場人物を引き立てる緻密な背景の描写に魅力を感じました。作画するなかで苦労したところを教えてください。
よよはち:宇宙に建つ建物や宇宙人の造形など、現実には存在しないものを描くことに苦労しました。宇宙を題材とした作品にあまり親しみがなく、雰囲気を掴むことがむずかしくて……。作品の設定がかたちとなっていく過程で、宇宙に関するものを描くことに少しずつ慣れていったと感じています。
ーーふたりで漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
よよはち:幼少期から絵を描くことが好きだったのですが、今までは二次創作のイラストばかり描いていました。今年に入ってから、SNSで繋がっている方が漫画家としてデビューされているのを見て、自分の作品を作ることに強い憧れを抱くようになりました。
そこで知り合いに漫画を描いてみたいとご相談したところ、夏乃雨さんをご紹介していただきました。
初めての打ち合わせで夏乃さんの漫画の企画を見せていただいたのですが、「なんでこんなに私の感性に響くようなものを書けるんだろう」と思うものばかりでした。夏乃さんの感性はもちろん、人間性も素晴らしい方で、ぜひ一緒に作品を作りたい!と思いました。
夏乃雨:私も作画を担当してくれる人を探しており、知り合いに相談して紹介してくれたのがよよはちさんでした。そしてよよはちさんに惚れ込んでしまったのです。
よよはちさんの描く女の子はとても可愛らしく、作品の世界観もすごく素敵だと感じていました。よよはちさんの魅力を生かせる作品をつくりたいと思ったことが、本作が生まれた最初のきっかけでもあります。
ーーふたりで創作することについて、感じていることを教えてください。
夏乃雨:「よよはちさんのためにいい作品をつくらなきゃ」と思うことが多いです。
よよはち:私もその気持ちはすごく感じています。ひとりだとサボってしまうときもあったのですが、今は夏乃さんのために描こうと思いながら執筆を続けていることができています。
夏乃雨:もちろん、読者の方からいただく感想もうれしいのですが、それと同じくらい「よよはちさんのためにつくろう」という思いが創作のモチベーションとなっています。
また、よよはちさんのキャラクターデザインを眺めていると、このキャラクターにはこんなお話も描きたいなというアイデアがどんどん出てきて……。「よよはちさん、すごいな」といつも思っています。
よよはち:私は私が描きたいものを描いているだけなので、夏乃さんが私の絵に共感してくれるのはありがたいです。
ーー今後の目標を教えてください。
よよはち:漫画の賞を獲得したり、商業漫画家として活動できたらうれしいですが、今は漫画を描くことが楽しいという思いしかありません。夏乃さんと一緒に漫画をつくれたら、それだけでいいなと思っています。自分ひとりではこんな作品をつくれなかったと思うので。
夏乃雨:私も同じ思いがつよいです。私は自分がつらかったときに漫画が寄り添ってくれたから、今度は私も誰かのために作品をつくりたいという思いから創作をはじめました。今は漫画とは異なる仕事をしながら創作活動をしていますが、よよはちさんと楽しくものづくりをすることができ、自分の心が豊かになったと感じています。
作者が楽しんでつくっている作品は読者にも伝わると感じているため、これからも自分たちも楽しんで作品をつくれたらと思っています。創作するうえで「作り手が心から楽しめているか」という点は大切なことだと思いますね。