『空挺ドラゴンズ』『ダンジョン飯』 食べられないはずの異世界飯に飯テロされる理由とは

食べられないはずの異世界飯が美味しそう

 桑原太矩『空挺ドラゴンズ』と、九井諒子『ダンジョン飯』は、どちらも異世界を舞台にした冒険を描いたコミック。そしてどちらも異世界ならではの料理を美味しそうに食べる人たちを描いている。

 『空挺ドラゴンズ』の場合は龍、『ダンジョン飯』はモンスターといった具合に、どちらも現代人には珍妙だったり、グロテスクに見えたりする食材を使いながら、できあがる料理がどれも極上に見えてしまう。その理由は、食べる相手に対する深い知識であったり、食べるためにかけた労力であったりといったものがしっかりと描かれているからだ。

 2020年1月からテレビアニメ化されたこともあって、ファン層を広げた『空挺ドラゴンズ』は、空を行く捕龍船に乗って空中に生きている龍を狩る龍捕り(おろちとり)の人々の物語だ。龍といってもファンタジーに出てくるドラゴンという感じではなく、深海魚が巨大化したような風体で、さまざまな種類が存在する。捕龍船はそうした龍を獲っては肉を切り分け、油を絞り骨も皮も内蔵も処理して売りさばく。

 物語は、クイン・ザザ号という小型の捕龍船の乗組員達の日常を描きながら進んでいく。龍を獲って食うことしか考えていないミカや、美女で龍捕りとしての技術も確かなヴァナベルといった乗組員たちが、それぞれの過去と向き合うようなドラマを楽しめるが、そうした展開の中で、「龍をどうやって食うか」というグルメ漫画的なエピソードが添えられ、飯テロ気味に食欲をかき立てる。

 捕らえたばかりの龍を切り分け、焼いてステーキにしたものが美味しそうなのは当然として、叩いて薄くのばして衣を付け、油とバターを引いたフライパンの上で揚げ焼きして作る龍のカツレツも美味しそう。ヴァナベルが酢漬けのキャベツや芋といった余った食材と龍のカラギモを使い、夜食代わりに作ったテリーヌが出てきたら、酒とともに味わって夜中に大量のカロリーを摂取してしまいそうだ。

 そのヴァナベルが、自らの出自と改めて対峙するために戻った島国に、追いかけるようにやって来たミカたちと龍との戦いが描かれる最新の第11巻では、解体した龍肉のブロックやニンジン、カボチャといった食材を箱に入れ、穴の底に並べた焼いた石の上に置いて土をかけて蒸し焼きにする料理が登場する。大量の食材を現場で一気に調理できる優れ技だ。

 登場するどの料理も、架空の存在である龍肉が美味しそうに感じられるのは、しっかりした手順で調理され、しっかりとした絵で描画されているからだろう。紙の中、モニターの中にあって手を触れられない料理でありながら、次元を超えて漂ってくるその匂いもまた、『空挺ドラゴンズ』の大きな魅力だ。これが龍肉ではなく、牛や豚や羊などで作っても同じように美味なのか。しっかりとレシピも添えられているだけに、試してみたくなる。



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