『東京卍リベンジャーズ』マイキーの“黒い衝動”の正体は? 孤高のカリスマの葛藤を考察

『東京卍リベンジャーズ』マイキーの闇

※本稿はネタバレを含みます。

 今や大人気作品となった『東京リベンジャーズ』。ヤンキー漫画にタイムリープが掛け合わさった、これまでにないストーリー展開が魅力の作品だ。現在発売されている原作単行本23巻までの中で、大きな抗争は「8・3抗争」、「血のハロウィン」、「聖夜決戦」、「関東事変」の4回。悲しい結末を迎えるものもあったが、いずれも未来を変えるべくタイムリープを繰り返している主人公の花垣武道が奮闘。10回のタイムリープを繰り返し、少しずつ未来を変えていっている。

 そして、そのすべての出来事の中心にいると言っても過言ではない人物は、マイキーこと佐野万次郎だ。マイキーは武道がタイムリープで過去から現在に戻ってくる度、闇落ちして凶悪犯罪に手を染めている。特に「聖夜決戦」後の現代では仲間だった龍宮寺堅、三ツ谷隆、松野千冬、柴八戒など東京卍會メンバーを殺害する事態にまでなっていた。そしてマイキーが度々闇堕ちをしてしまう理由は、壮絶な過去があるからに他ならない。

 幼少期に両親を亡くしたマイキーは、実兄である真一郎とともに祖父の家で育てられる。腕っぷしも弱く、女性にも弱かったが、カリスマ性があり、多くの不良たちから慕われていた真一郎は、マイキーにとって憧れの存在で、年の離れた兄に憧れを抱いていた描写は作中度々ある。そんな日常に、異母妹であるエマが加わる。マイキーと名乗り始めたのは、母親に捨てられたと心を開かないエマがせめて名前で嫌な思いをしないようにという優しい配慮から。そしてその後も何かとエマの面倒を見て家族の一員として迎え入れてるようになっていった。やや複雑な家庭環境ではあったが、家族に囲まれながらのびのびと育っていたマイキー。だが、兄・真一郎が死亡したことから少しずつ歯車が狂っていってしまう。

 単行本23巻で、マイキーは武道だけにこんなことを語っている。「オレには自分では制御できない“もう一人のオレ”みたいなものがある」、「“黒い衝動”」、「12年後の自分が怖い。周りを不幸にしてるに違いない。だから東卍のみんなとは決別する。わかるだろ? 巻き込みたくないんだ」、「オマエももう12年後のオレに近寄るな。過去に戻ってオレを救おうなんて思うな」。武道はマイキーが闇落ちするのは稀咲が鍵となっていると思って奔走していたが、元々マイキーは心の中には残虐な一面、黒い衝動を抱えていた。その黒い衝動は幼少期から度々顔を覗かせていたが、真一郎やエマ、場地圭介によって抑え込まれていた。だが、マイキーが心の拠り所にしていた彼らは全員亡くなってしまっている。真一郎は共に東京卍會を創設した場地圭介、羽宮に殺され、エマは稀咲に殺され、場地は「血のハロウィン」で自害してしまったのだ。

 彼らがいなくなったことで、マイキーは黒い衝動を自分で抑え込むことができなくなり、“闇堕ちルート”にいってしまう。実際「聖夜決戦」後、マイキーは「たまにわかんなくなる 当たり前のようにいた兄貴がいない それがどういう事なのか理解できなくなる そういう時はいつも頭が真っ白になって 右も左も上も下もわかんなくなっちまう 何が正しくて何が間違ってんのか」と武道に打ち明けている。この「右も左も上も下もわかんなくなっちまう 何が正しくて何が間違ってんのか」こそ、黒い衝動のことなのだろう。

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