『珈琲いかがでしょう』『凪のお暇』コナリミサトが語る、心地よく生きていくために 「時が経てば誤作動が正されるはず」

コナリミサトが語る、心地よく生きるために

電子書籍のバナー広告で繋がった漫画家人生

――『凪のお暇』については、単純にラブコメっていうカテゴリに収まらない作品というイメージだったもので。他に影響を受けた作家さんや作品はありますか?

コナリ:黒田硫黄先生が描かれている『茄子』という、茄子が主役の短編集がすごく好きですね。もともと『茄子』は高校生のころ、友達に下北沢のヴィレッジヴァンガードに連れて行ってもらって教えてもらったんですよ。サブカルに疎かったので、そこでいろんな作家さんを教えてもらいました。

――なるほど。コナリ先生の作風ができあがっていった背景に触れられた気がします。最近はどのような漫画を読まれているんですか?

コナリ:真倉翔先生・岡野剛先生の『地獄先生ぬ〜べ〜』を読み返しています。ふと細かいところは忘れているなと思って手にとったのがきっかけですね。最近はふと思い立った時にWEBでパッと買えるじゃないですか。「西村しのぶ先生の最新作もう出てるかな?」って検索したりして。

――紙の本よりも、電子書籍で読まれることのほうが多いですか?

コナリ:そうですね。好みが分かれるところだとは思いますが、本棚がいっぱいっていうのもありますし、やっぱりいつでも購入できるっていうのが便利ですよね。私は電子書籍にものすごい感謝しているんですよ。実は『凪のお暇』の1巻って当初は全然売れていなくて、2巻を出せないかもって言われていて。もう漫画家をやめようかとも本気で考えていたんです。そんなときに、バナー広告で一気に注目してもらえて。あれが分岐点でした。

――そんなことがあったんですね。コナリ先生の明るさを見ていると、順風満帆に続けてこられたのかと。

コナリ:いえいえ、全然そんなことないんですよ。いちばん落ち込んだのは、28歳のころだったかな。同じくらいにデビューした作家さんたちがどんどん売れていって、「私もう無理なのかも」みたいに思ったこともありました。自分が思い描いていた28歳の像と、現実の自分の乖離がひどくて。

――ありますよね。「こうなっているだろう」という何歳像って。あれって自分が見ていたころの年代と実際になったときの時代がズレるから、一致することって難しいですよね。

コナリ:そうなんです。でも、そのときは気づけなくて。でも、どんなに苦しくても、漫画に関しては諦められなかったんですよね。そのころは仕事もないですから、「どうしていこう、いやまだ描きたいっぽい」って。毎日散歩ばかりして。とりあえずノートに描いてみたり、いろんな人の漫画を読んだりして。最終的には、これしかできることがないかもって、続けてきました。

――最近は、そういった何歳までに「こうなっていたい」という像はありますか?

コナリ:全然。だから、漫画家って何歳まで続けられるんだろうって考えてみたりするんですよ。定年っていう概念もないですし。

――描きたいことがなくなったら、みたいな感じなのでしょうか。そういうことにはならなさそうですか?

コナリ:あ、ちょっと前にありました。描きたいものなんてないのかもしれない、みたいに思いつめちゃって。でも、まだあるっぽいんですよね。というか今描いている人達のこと着地させてあげないとっていう(笑)。あと新作を描くなら今度は、手芸をテーマにした漫画を描きたいなって思っているところです。最近、指編みをしているんですけど、編んでは解いて……って諸行無常みたいなことして、なかなか進まないので。漫画にしたらやるだろうと(笑)。

ハッピーな日々を続けていくためのライフハックを描きたい

――コナリ先生の作品は、ほんわかした癒やし系かと思っていたら一気に突き落とされるような感覚が印象的だったので、実はインタビュー前は先生にも影の部分を感じられるのかと思っていました。

コナリ:いやいや。基本的にハッピーな人間ですよ。ダブルピースして「ハッピー」って言って、ハッピーなほうに持っていくようにしています。ときどき、毒とか呪いをかけられることもありますけど。

――わかります。「ああ。今かけられてる」ってなることありますよね。

コナリ:わかりますか? あれ、びっくりしちゃいますよね。仲の良かった子が、久しぶりにあったら毒がすごくて、悲しい気持ちになったことがあるんですよ。そういうときは、今目の前にいる子は違う世界線から誤って飛んできてしまったんだって思うようにしています。だから、今までこの子と作ってきた大事な思い出は汚れてないから大丈夫、って。

――なるほど。タイムマシンの誤作動かな、みたいな。

コナリ:そうです、伏線回収しにきたのかな、みたいな(笑)。で、時の流れが解決してくれるのを信じてちょっと距離を置きますね。思い出すと今でも憤懣遣る方ないですけど、きっと時が経てば誤作動が正されるはず、って。

――DIYのときもそうですけど、ちょっと時間をおくのって役立ちますね。私なりのおまじないの言葉にします。

コナリ:それ、ライフハックとして今後描けたらいいですね。

――それは楽しみですね。楽しく生きる知恵をコナリ先生の作品からいただきたいです。

コナリ:人生って自分ではどうしようもないことがたくさんあるので。それにモヤモヤし続けるより、一旦置いて自分自身で変えられるところに集中するっていうのは、本当に大事だと思うんです。DIYもそうですけど、ジョギングなんかもおすすめですね。それでも晴れない気持ちは「これは違う世界線から……」って思いながら、なるべくハッピーに生きたいですね。心健やかに乗りきりましょう!

■書誌情報
『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデンコミックス EDENシリーズ)
著者:コナリミサト
出版社:マッグガーデン
MAGCOMIにて2話まで無料配信中!

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