『SPY×FAMILY』フォージャー家とデズモンド家の対比から見えてくる、理想の“家族”のあり方 最新7巻レビュー
遠藤達哉がマンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載している『SPY×FAMILY』(集英社)は、特殊なシチュエーションのコメディ漫画だ。
東国(オスタリア)で暮らすロイド・フォージャーは妻のヨル、娘のアーニャとしあわせな日々を送っていた。しかしフォージャー家は、ある目的のために作られたニセモノの家族だった。
精神科医の夫・ロイドは西国(ウェスタリア)のスパイ〈黄昏〉。市役所で事務員として働く妻・ヨルは殺し屋〈いばら姫〉。そして、娘のアーニャは「心の声を読むこと」ができる超能力者。正体を隠し偽りの親子を演じる3人。しかし、本物の家族以上に心は通じ合っていた。
以下、ネタバレあり。
最新刊となる第7巻では、ついに〈黄昏〉が国家統一党総裁のドノバン・デズモンドと対面する。
〈黄昏〉の目的は「東西平和を脅かす」と恐れられているデズモンドに接触し、その動向を探ることだった。用心深いデズモンドは表舞台に姿を現さないが、唯一の例外が息子の通うイーデン校の懇親会。この懇談会に参加するために〈黄昏〉は家族を作り、アーニャをイーデン校に入学させたのだ。
デズモンドの息子・ダミアンをアーニャが入学式に殴ったことを謝罪する名目でデズモンドに話しかけた〈黄昏〉は「改めてお宅に伺い、正式に謝罪を」と申し出るが、デズモンドは「いや結構」と笑顔で断る。
父親に「自分のために怒ってほしい」と思ったダミアンは、〈黄昏〉の意見に同意するが、デズモンドの表情を見て萎縮してしまう。血が繋がっている本当の家族でありながらデズモンド親子の関係には距離がある。「偽りの家族」でありながら「深い繋がりを見せる」ロイド家とは真逆である。
デズモンドは、笑顔と無表情の落差が極端で、何を考えているのか全くわからない。「血の繋がった子であろうがしょせんは他人」「他人を真に理解するのは不可能だ」「人と人は結局」「永遠に分かり合えん」と息子の前で平然と言うデズモンドは、東西の戦争を目論む恐ろしい悪党に見える。しかし、わざわざ懇親会に出席し、息子の努力を褒める優しい父親としての一面もある。初対面ということもあり〈黄昏〉はデズモンドの真意を測りかねていた。