『東京卍リベンジャーズ』影の支配者、稀咲鉄太 卑劣な人間性に隠された悲しい過去とは?

『東リベ』稀咲鉄太の悲しい過去

 彼の行動を振り返ると、自分の手を汚さない緻密な画策を練ってきたことがわかる。やっていることは外道極まりないのだが、これだけ意のままに人心掌握できるということは頭脳明晰かつ、ある種のカリスマ性がある人物なのだろう。

 良い方向でその能力を使えば、別世界で天下を取れたであろう稀咲は、どうして裏の世界でその能力を使うに至ったのだろうか。目的は、橘日向である。小学生の頃、日向と同じ塾に通っていた稀咲は日向に恋心を抱くようになった。だが、日向はその頃から武道に好意を寄せていた。その武道が「日本で一番のヒーローになる」と発言したことがきっかけとなり、日向の関心を引くために同じく日本一の不良になることを決意したというわけだ。

 12年後の現代において、稀咲はマイキーと並ぶ「東京卍會」のツートップ。言わば日本一の不良になり、満を持して日向にプロポーズするものの玉砕。「モノにできないなら殺してしまえ」という常人には理解できない思考で、日向を殺害してしまうのだ。

 もちろん、許されることではなく歪みに歪んだ感情なのだが、始まりは小学生の頃の淡い恋心。そして、中学生にいじめられそうになっていた日向を助けるために負けるとわかっていても登場した武道に、少なからず憧れがあったはずだ。実際、現代で武道を銃殺しようとした際も、稀咲は涙を流しながら「じゃあな…オレの“ヒーロー”」と言っている。日向への淡い恋心と、キラキラ輝いて見えた武道への憧憬。極悪非道の稀咲も、もとはどこにでもいる子どもだったはずだ。しかしあらぬ方向へ歪み、悲惨な結末に繋がってしまう……。そう考えると、どこかやるせない感情が湧いてくる。

 心に闇を抱え、一癖も二癖もある稀咲を実写映画では間宮祥太朗が演じる。間宮と言えば交友関係も広く、絵に描いたような“陽キャ”だ。だが、これまでコメディな演技もシリアスな演技もこなしてきており、出演作品は数知れない。鋭い眼光がどことなく稀咲を彷彿させる間宮が、今回はどんな演技を見せるのか。稀咲の歪みをどう表現するのか。実写映画からも目が離せない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「書評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる