『きりひと賛歌』『スーパードクターK』『動物のお医者さん』……医療マンガ50年の歴史を考察

医療マンガ50年の歴史を考察

 「2010年代 医療マンガの発展期」には、扱われる医療従事者の職種や疾患・症例が多様化したこと、また、ウェブ媒体を初出とする多様なエッセイマンガによって標準医療に収まらない「個人」の物語が登場したことを指摘する。

鈴ノ木ユウ『コウノドリ』(モーニングKC)

 前者の流れからは法医学ミステリーの『屍活師』、ウェブ発の『マンガで分かる心療内科』、災害医療を描いた『Dr.DMAT 瓦礫の下のヒポクラテス』、小学校医ものの『放課後カルテ』、産婦人科を描いた『コウノドリ』『透明なゆりかご』、病理医ものの『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』、聴覚障害をめぐるルポマンガ『淋しいのはアンタだけじゃない』、薬剤師ものの『アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり』等々。

 後者の流れからは統合失調症当事者の視点で描かれた『人間仮免中』や『失踪日記2 アル中病棟』、『うつヌケ』などが取り上げられている。

 こうして並べて見ると、人間や動物の生老病死に直接的に関わる医療マンガには心を打つ作品が非常に多いことを改めて実感する。また、先人がさまざまな病気や障害を描いてくれたおかげでひとりで抱え込まずに済むありがたさ、偏見を取り払うきっかけになっていることも感じる。

 もっといろいろなマンガを通じて病気と医療について知りたい、命について考えたいと思わせてくれる一冊だ。

■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。

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