大友克洋『浦沢直樹の漫勉neo』で垣間見えた作家性と人間らしさ 代表作『童夢』の映画的な画作りを解剖

『漫勉』大友克洋と浦沢直樹がトーク

  3月29日。『浦沢直樹の漫勉neo』(NHK Eテレ、以下『漫勉』)が放送された。『20世紀少年』(小学館)や『連続漫画小説 あさドラ!』(同)の作者として知られる漫画家・浦沢直樹がプレゼンターを務める『漫勉』は、普段は立ち入ることができない漫画家の執筆風景を最新の機材で撮影し、その映像を見ながらゲストの漫画家と語り合う番組だ。

  今回のゲストは『AKIRA』(講談社)の作者として知られる大友克洋。1983年に刊行された大友の代表作『童夢』(双葉社)を70インチのモニターに映された生原稿を観ながら振り返るという構成になっていた。

 

小津安二郎、キューブリック…『童夢』の「映画的」な見せ方

『童夢』(双葉社)

 『童夢』は、ある団地で次々と起こる連続不審死の背後で起こっている二人の能力者の対決を描いた全1巻の漫画だ。

 当時、浦沢は団地の全貌を描いた見開きのページに小さく「ドサッ」と書かれた吹き出しを観て静かな圧力を感じ「漫画はこういう時代になる」と衝撃を受けたという。同時に浦沢は『童夢』のコマ割りで「断ち切り」(枠線を描かずに誌面の端まで絵を描く)を使っていないことに注目。これに対し大友は「絵の中に(読者を)引き込みたい」と答えている。
 
 画だけで状況を見せていく『童夢』を「映画的」だと、浦沢は繰り返し語る。たとえば、正面から人物を捉えたカットの「切り返し」で進む事情聴取の場面を「小津安二郎」だと言い、この表現が可能なのは大友が鼻を正面から描けるからだと指摘する。それまでの漫画の鼻は、斜めから観た鼻筋を記号的に描いたものが多く、正面から描くことが難しかったのだが、大友はそれを可能にしたという。

 他にもスタンリー・キューブリック監督の映画『シャイニング』との類似性や、事情聴取と同時進行で刑事たちが動く姿が挟み込まれるカット割りなど、数々の映画的手法が『童夢』に持ち込まれたことが、二人の会話を聞いていると理解できる。

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