YOASOBIキービジュアルで話題! イラストレーター古塔つみが語る、“わかりやすさ”へのアンチテーゼ

古塔つみが語る クリエイティブの源泉

 「あっ、女子しか描けません。すてきな人しか描けません。」をテーマに掲げる古塔つみ。2017年頃からInstagram、Twitterなどで作品を公開し、10〜20代の女性を中心に支持を得ている気鋭のイラストレーターだ。江口寿史、大友克洋、鳥山明などの影響を感じさせながら、驚くほど幅広い絵柄によって、“女の子”の多彩な魅力を表現。ここ数年はCDのアートワークやMV制作、アパレル・ブランドとのコラボレーションも増加し、YOASOBIのキービジュアルを手がけたことも大きな話題を集めた。

 初の作品集『赤盤』を発表し、個展「Cotoh Tsumi solo Exhibition “q”」(原宿・Anicoremix Gallery/4月28日〜5月9日)を開催するなど、活動の幅を着実に広げている古塔に、これまでのキャリアとクリエイティブの源泉について聞いた。(森朋之)

『赤盤』収録のオリジナルイラストを一部公開(全8枚)

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「わかりやすさ」へのアンチテーゼ

——古塔さんは年齢、性別、顔を公表しておらず、どんな人なのかほとんどわからない状態になっています。情報を開示しないのはなぜですか?

 アートを巡る日本の環境も理由の一つですね。最近、アート界にも学歴があることに気付いて。「芸大卒、女性、モデル」がいちばん強くて、フランスで活動したことがあれば最強スペック。そんなことに左右されるのはイヤだし、情報をオープンにすることで、恣意的に見られるのも良くないなと。純粋に絵を見てもらうためには、余計な情報はないほうがいいと思うんです。

——古塔さんは「女の子しか描かない」と公言していますが、その絵柄は驚くほど幅広い。一人のイラストレーターが描いたとは思えないほど多様ですが、いろいろなタッチの絵を描くことも、当初から目指してたんでしょうか?

 そうですね。単純に飽き性ですし、いろいろな女性の表情を描きたいんですよね。女の子のイラストが上手い人に対する憧れもあるんですが、多くの場合、その作家が理想の顔を描いている印象があって。絵そのものよりも、スタイルを売っているというのかな。私はそういうタイプではないし、とにかく絵が上手くなりたいという欲求が強いんですよね。

©︎古塔つみ

——「好きな顔を描く」のは作家のエゴだと?

 そうですね。エゴがあるとすれば様々な人の雰囲気を描き分けたいと思うことかなと思います。私自体が大きめの出力装置でありたい。なので「どの絵も古塔さんっぽいですね」という感想をもらうと悔しいし、「やばい! 劣化してる!」と思ってしまいます。あと、「わかりづらくしたい」という気持ちもありますね。似たような絵だけを描いたほうが、ステレオタイプでわかりやすいと思うんですが、私はそうではなく『新世紀エヴァンゲリオン』ではないですけど、簡単にわかってもらっては困るという気持ちがあるので。

——今回の個展「Cotoh Tsumi solo Exhibition “q”」のキャッチフレーズも、「表層のかわいいは理解できるが、私のことをわかってるというやつは嘘つきだ」ですからね。

 他人のことなんて、同じ部屋で3年くらい暮らさないとわからないですから。勝手に人柄を決められるのは本当に嫌です(笑)。

——『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野秀明監督の「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきてる」という発言も波紋を広げましたが、「わかりやすさ」を求められる風潮に抗いたいという思いもありますか?

 そうですね。新しい文化、若い世代の文化は本来、大人には理解できないものだし、それが正常な状態だと思うんです。最近は若い子たちの文化を大人が容易に理解してしまう傾向があるし、ちょっと寂しいですよね。ネット社会になり、すぐに答え合わせや確認作業ができてしまうのも一つの要因でしょう。新しい表現が出てきたとしても、すぐに「これは●●のモノマネ」ということになるので。

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