社会人×女子高生の“年の差”だけど安心安全? 『恋と呼ぶには気持ち悪い』の平和な世界

“年の差”ラブコメ『恋きも』の平和な世界

 そんな一花に亮さんは心酔しきっていて、一切気持ち悪いことをしないままです。性的表現ほぼゼロです。ものすごい下からで、もう下僕のよう。一花はお風呂も覗かれないし、ジャケットすら脱がない。制服という鎧にガッチリ守られているんです。お父さんお母さん、安心して娘さんに読ませてOKです。

 親戚の女子高生を追いかけ回す教師の話みたいに、ひたすら欲情して押し倒して「喉からちんこが出そうです」とか言わないし、親の都合で同居した高校生同士みたいに、好き合ったけど姉弟疑惑が持ち上がったりしないし、修学旅行のバスが谷底に転落してサバイバルが始まったりしないし、バイクで事故って5mそらを飛んだりもしないし、相手が病気で死んじゃったりもしません。

 平和です。悩みごとは恋愛がらみ、だけど性的なトラブル一切なし、てか「去勢されてるのかな」くらい男子が大人しい。安全です。いいな〜、こういう平和な世界! 最近、忘れ果てていた気がします。

 まあちょっと気になってるのは、一花のプレセント。最初に助けてもらったお礼にキスを提案されて、「助けてもらったお礼が自分ってなに考えてるんですか?」とか激烈に批判してたのに、亮さんに、迷った挙げ句にハグをプレゼントするってくだりがあるんですよ。お礼に自分はダメだけど、プレゼントに自分はOKなんですか……?

 「ハグをプレゼントしよう」って、そこにものすごい価値があると確信しているのってことですよね。昔、知恵袋かなんかで「嫁の誕生日に何を贈ろうか考え、『そうだ健康な自分をプレゼントしよう』と思って、フルマラソンに出場しましたが、その日から嫁の機嫌がよくありません」みたいなのがありました。もちろん回答欄ではメッタ斬りにされてましたが、これが夫婦じゃなくて、付き合う前の男女なら「君のために走る!」とかいって物語になったのかな、とも思います。

 亮さんや一花の純粋さがまぶしいです。

『恋と呼ぶには気持ち悪い』8巻
『恋と呼ぶには気持ち悪い』8巻

■和久井香菜子(わくい・かなこ)
少女マンガ解説、ライター、編集。大学卒論で「少女漫画の女性像」を執筆し、マンガ研究のおもしろさを知る。東京マンガレビュアーズレビュアー。視覚障害者による文字起こしサービスや監修を行う合同会社ブラインドライターズ(http://blindwriters.co.jp/)代表。

■書籍情報
『恋と呼ぶには気持ち悪い』1〜8巻発売中
著者:もぐす
出版社:一迅社

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