『月刊少女野崎くん』の恋愛は10年間も進展していない? “変わらない物語”の面白さを考察

『月刊少女野崎くん』の10年間を振り返る

恋が進展しない物語の心地よさ

 野崎が漫画にすべてを捧げるせいで、恋は進展せずに10年もの月日が流れた。「さすがに何も起こらなすぎでは?」「千代があまりにも不憫すぎる」と思われてもおかしくない時間だと思う。

 しかしその“進まなさ”に心地よさを感じるのが、『月刊少女野崎くん』の魅力なのだ。この作品のキャラクターたちは、ほんの少し、いやだいぶ、恋愛に疎い。だから「なんで気持ちが通じないの」「またすれ違いが起こるじゃん!」といった感情移入をしすぎることなく、キャラクターたちを微笑ましく見守るくらいの程よい距離感が保てるのだ。

 たださすがに連載開始から10年を迎えようとしている今。野崎と千代、さらには周りのキャラクターたちの関係にも、ほんの少しの変化が見られ始めている。作者の椿いづみもTwitterで、若松が10年近くもの間ローレライの正体を掴めていない事実に動揺しつつ、関係性を動かしていることを明言していた(椿いづみTwitter)。

 キャラクターたちが恋を知ることで、これまでになかった喜びが味わえるかもしれない。夢野咲子(野崎)の『恋しよっ♡』にリアリティが宿るかもしれない。そう考えれば、喜ばしい変化だろう。

 ただほんのちょっとだけ、『月刊少女野崎くん』には恋愛フラグを変化球でへし折り続けてほしいと願う自分もいるのだ。

■クリス
福岡県在住のフリーライター。企業の採用やPRコンテンツ記事を中心に執筆。ブログでは、趣味のアニメや漫画の感想文を書いている。ブログTwitter

■書籍情報
『月刊少女野崎くん(12)』
椿いづみ 著
定価:660円(税込)
出版社:スクウェア・エニックス
公式サイト

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