『パタリロ!』『ガラスの仮面』『あさりちゃん』……時代を生き抜いた、長期連載の少女漫画たち

少女漫画の長期連載作品を振り返る

3.『あさりちゃん』

 上記二作はまだ終わっていない作品だが、100巻ぴったりで完結した漫画がある。子ども向け漫画、少女漫画、どちらととらえていいのかは賛否の分かれるところだが、長期連載について語る際、『あさりちゃん』ははずせないだろう。「二人組による1コミックシリーズ最多発行巻数(女性作家) 」としてギネス世界記録に認定されたことでも話題になった作品だ。

 作者は漫画家・室山まゆみだが、これはペンネームで、室山眞弓と妹の室山眞里子の二人によって描かれた漫画だ。1978年から2014年までの36年間、『小学二年生』(小学館)などの学習雑誌などで連載された。

 主人公は小学生のあさり。勉強はできないが明るくてスポーツ万能の少女である。一方、二つ年上の姉・たたみは、反対に勉強はできるがスポーツが苦手で、あさりとケンカばかりしている。この二人を軸に、両親や同級生、担任の先生が登場し、家庭生活や学校での出来事がギャグテイストで進む。

 長期連載のため『あさりちゃん』を読んで時代の流れを感じる人は多いと思う。例えば序盤は姉妹が悪さをするたびに、武器のようなものを持って追いかけまわしていた母・さんごは、終盤に向かうにつれて比較的穏やかな性格になる。後半はペットの犬・うにょも加わり、絵柄はどんどん現代的な可愛らしさを帯びていくなどの変化があった。

 1970年代後半に連載が始まったことも、3作品の共通点だ。今回紹介しきれなかった『王家の紋章』(1976年連載開始/既刊66巻)や『エロイカより愛をこめて』(1976年から2012年まで連載/全39巻)もそうである。

 長期にわたる連載によって、当然のことながら作者も年齢を重ねていく。読者は「終わってほしくない」という願いと、「未完の漫画になったらどうしよう」という不安、両方を抱えることになる。これは少年漫画も少女漫画も変わらないだろう。『あさりちゃん』が完結した際にそれは表面化した。「終わってしまって残念ですが、しっかりと完結させてくださってありがとうございます」という感想がSNSにあふれたのだ。

 連載中の『パタリロ!』と休載中の『ガラスの仮面』。今後どのような展開を見せるのか待ち遠しい。そしてそこには、「作者はどのように完結させるのか」という期待も含まれている。

■若林理央
フリーライター。
東京都在住、大阪府出身。取材記事や書評・漫画評を中心に執筆している。趣味は読書とミュージカルを見ること。

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