自殺志願少女との恋愛小説、なぜ支持される? 『死にたがりな少女~』から考える、若者を取り巻く状況

自殺志願少女との恋愛小説、なぜ読まれる?

 2021年2月末に、表紙の話題でバズった小説があった。

 「作者の想像を数億倍上回った」表紙イラストが話題 ふわっとしたイメージもプロの手にかかるとかかるとこうなる!(https://maidonanews.jp/article/14211672

 宝島文庫から刊行された星火燎原『死にたがりな少女の自殺を邪魔して、遊びにつれていく話。』は2018年に「小説家になろう」に投稿され、2020年に結果発表された第8回ネット小説大賞を受賞した作品だ。

 宝島文庫は過去にも「なろう」発で『異世界居酒屋「のぶ」』などを書籍化しているほか、武田綾乃『響け!ユーフォニアム』シリーズ、「このミステリーがすごい!」大賞受賞作などを刊行する、一般文芸やライト文芸のレーベルである。

 この作品の導入部はこうだ。

 生きる意味などないと思うが自殺する勇気もない二十歳の男性・相葉のもとに死神が現れ、余命3年になる代わりに最大24時間巻き戻せる(ただし一度巻き戻したあとは36時間後まで使えなくなる)「ウロボロスの銀時計」を手に入れる。

 相葉は近所で飛び降り自殺した中3の少女のニュースを聞き、「自分と同じ自殺念慮者だが、実行した人間がいる」と好奇心で現場に行ってみると「やっといなくなってくれた」などと嬉々としている同級生らしき4人組と遭遇。

 「時間を巻き戻して自殺を邪魔しよう」と思い立つ。気まぐれな気持ちだったが、何度止めても何度も彼女は自殺する。無関係だったころとは異なり、自分が関わったにもかかわらず自殺されるとどうにも罪悪感を抱き、夢見心地が悪いと思った相葉は、死にたがりの少女・一ノ瀬が自殺を諦めるまでしつこく関わり続けることにする――。

 互いに家庭環境に問題を抱え、地獄のような学校生活を送っていることが判明し、徐々にふたりの距離は縮まるが、相葉の寿命もわずかになっていく。

 その過程の描写が切実で、すばらしい。

 住野よるや三秋縋が好きな人には特にすすめたい一作であり、まったく表紙負けしていない良作だ。

マンガ動画「漫画エンジェルネコオカ」ノベライズの自殺念慮少女との恋愛小説

 実は最近もうひとつ話題になっている、自殺志願の少女とのラブストーリーがある。

 2011年3月に発売された岸馬きらく『飛び降りようとしている女子高生を助けたらどうなるのか?』(角川スニーカー文庫)だ。

 これはYouTubeのマンガ動画チャンネル「漫画エンジェルネコオカ」の作品をノベライズしたものだ。

 タイトル通り、飛び降りしようとしている女子高生を助けた男子高校生が「死ぬくらいなら彼女になってくれよ」と漏らしたところなぜか「いいですよ」と言われて付き合うことに始まるが、こちらの男女もやはり互いに家庭環境に問題を抱えている者同士が惹かれ合っていくことになる。

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