『新世紀エヴァンゲリオン』映画の後は漫画版を読むべき? それぞれの結末に込められた想い

『エヴァ』はマンガではどう描かれていたか

 エヴァンゲリオンのアニメーションが完結した。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見た人なら分かるラストシーンから、これで終わりなんだといった気分が世間に満ちている。ここで気になるのが、タイトルに付けられた反復記号だ。2007年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』なり、1995年放送開始のテレビシリーズに戻って見返すのだという意味にも取れるが、そこに、愛蔵版が刊行中の貞本義行による漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』(KADOKAWA)も含めることで、エヴァンゲリオンという物語が26年がかりで示したかったものが、よりくっきりと見えてくる。

 1995年10月4日に第壱話「使徒、襲来」が放送されるより9カ月も前に、『新世紀エヴァンゲリオン』というテレビアニメは誰が主人公で、どのようなロボットが登場して、何と戦うかが明らかにされていた。エヴァンゲリオンのキャラクターたちをデザインした貞本義行が、放送に先行して漫画版の連載を、「月刊少年エース」で始めたからだ。

 父親に呼ばれてやって来た碇シンジという少年が、怪獣と呼ぶには異形の化け物に襲撃された街で、スポーツカーを運転する美人だがヘンな所のある葛城ミサトに助けられ、連れて行かれた謎の施設でこれもロボットと呼ぶには異質なデザインの、巨大な人型の兵器に乗って戦えと命じられる。

 久々に会った父親からのいきなりの命令に驚くものの、断れば目の前にベッドごと運ばれてきた重傷の少女が、代わりに乗せられるとあってシンジは気概を見せ、自分が乗ると決断する。『機動戦士ガンダム』でアムロ・レイがガンダムに乗り込んだ瞬間にも似た、新しいヒーローが誕生する描写に、自分を重ねてヒーローになる願望が満たされた人も少なからずいただろう。

【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン2巻(KADOKAWA)
綾波レイ【愛蔵版】新世紀エヴァンゲリオン2巻(KADOKAWA)

 テレビアニメが始まって、動きやセリフ、音楽や効果音が付く中で、改めて使徒と呼ばれる化け物の迫力や綾波レイの可憐さ、ミサトの愛嬌に触れて、エヴァンゲリオンの世界にハマり込んでいったファンを、衝撃の展開が待ち受けていた。シンジが次々と騒動に巻き込まれていく中で、心を壊し、迷いを吐露し、絶望にうちひしがれた挙げ句、内面の世界で自問自答する結末に、最初の彷徨を繰り広げていた漫画版のシンジの未来が見えてしまった。

 だからといって、読む価値を失ってしまったかというと、漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』は社会現象にまでなったアニメの世界や、キャラクターたちに触れられ、物語の謎に迫れるアイテムとして人気を高めていく。レイやアスカの姿をじっくり眺められるだけでも嬉しい上に、シンジやゲンドウが何を考えていたかが分かりやすく描かれていたのも良かった。

 テレビシリーズの第弐拾四話「最後のシ者」に登場しては、即退場となった渚カヲルも、漫画版ではずっと早くネルフに合流して、シンジとの交流を深めていく。苦悩するシンジを理解者といった雰囲気で慰撫したアニメ版とは違って、漫画版のカヲルは遠慮のない言動でシンジを苛つかせる。

 3月26日に刊行された愛蔵版の第5巻で、シンジがカオルの胸をつかんで「前歯全部折ってやる」と脅す場面など、テレビシリーズでも新旧の劇場版でも想像ができない振る舞いだ。碇シンジというキャラクターにあり得た可能性のひとつが、漫画版『エヴァ』には描かれているのだとも言える。

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