天才野球少年が記憶喪失に? 人気急上昇の野球漫画『忘却バッテリー』の面白さとは
天才にツッコむ「普通」の存在
物語の語り部として、そしてツッコミ役として物語のキーパーソンとなっているのが山田太郎だ。弱小シニアクラブでそれなりに野球がうまかった山田太郎が清峰・要バッテリーと対戦し、震え上がる。「怖い 速い ムリ」。そう言って野球を辞め、小手指高校へと進学する。なのに野球を辞めるきっかけになったバッテリーと再会し、一緒に野球部に入部することになるのだから皮肉な話だ。
要への丁寧なツッコミはそれなりに親切で、容赦ない。というか、山田太郎以外、だいたいボケてるし、フザけている。清峰は大真面目にボケる。圧倒的にツッコミの人数が足りていないはずなのに、山田太郎が全部拾ってくれているので読者にストレスがない。
また、野球選手として「普通」の視線が「天才」たちの気づきになることも多く、物語を動かしていく上で大切な役割を果たしているのだ。山田太郎がいなければ、『忘却バッテリー』は成り立たなかっただろう。
チームプレーが重要である野球。それぞれの力がかみ合い、どのような相乗効果を生み出すのか。そして、要は智将のころの記憶を取り戻すのか、それとも、記憶喪失後のありのままの自分で智将のころの自分を超えていくのか。物語(試合)はまだ始まったばかりである。
(文=ふくだりょうこ(Twitter:@pukuryo))
■書籍情報
『忘却バッテリー』(ジャンプコミックス)1〜9巻発売中
著者:みかわ絵子
出版社:集英社
ジャンプ+URL:https://shonenjumpplus.com/episode/10834108156630506434
コミックスページ:https://www.shonenjump.com/j/rensai/list/boukyaku.html