爪切男×カマたくが語る、頑張りすぎない“中道”の生き方 「悩みがないことが、むしろ僕らの悩み(笑)」

爪切男×カマたくが語る、“中道”の生き方

SNSでは絶対喧嘩しない

カマたく

爪切男:『もはや僕は人間じゃない』では、パチンコ中毒のお坊さんに「中道の思想」を教えてもらったエピソードを書きました。これは簡単にいうと「苦しい修行をしてばかりでもいけない、かといって怠けすぎてもいけない、あなたにとってちょうどいい場所を見つけなさい」ということなんです。で、この中道の思想って、便利なんですよ。だって、仕事や生活のことで誰かに注意されても「俺にとってこれが中道だから」って返したら、相手は何も言えないじゃないですか。言葉は使いようではありますね(笑)。

カマたく:それって、ぶっちゃけただの開き直りですよね?

爪切男:そう、開き直り。

カマたく:じゃあ私にはぴったりの考え方だ(笑)、「みんな開き直りましょう」って! でも、開き直りって、今の世の中ではやりづらいかもしれませんね。

爪切男:SNSで喧嘩をしている人を見ると、極端な意見が多くて、中道的なちょうどいいところには収まらない。Twitterの140字でかたがつくわけないのに、って思いますね。

カマたく:お互いに「おれは間違ってない!」と言いあって、見ている周りの人まで傷ついてしまう。その人たちのファンも嫌な思いをする。私、SNSでは絶対喧嘩しないようにしているんです。

爪切男:負のループにはまりこんでいることに気づいてない方が多いですよね。「おれは間違ってない」ってお互い言い張るから。しかも、当事者以外の人も入ってきて、傷つく人が増えたりする。

カマたく:よく「ツイッターで嫌な人がいるんですがどうしたらいいんですか?」って質問をいただくんですけど、私の考えでは、そういう場合「ミュート」するといいと思います。よくブロックしろっていう人もいるんですけど、ブロックだとツイッターの仕組みで、相手にブロックしていることがわかってしまうから。

爪切男:ミュートされたら自分の攻撃が相手に届いているのか分からない。

カマたく:SNSなんかで交わされる心無い言葉も、空気中の窒素みたいなものと思うようにしているんです。あるんだけど意味がない、吸っても害にはならない。

爪切男:そんなの、ミュートして、生殺ししちゃいましょうよ。

カマたく:SNSを見ていると情報量が多くてお腹いっぱいになるじゃないじゃないですか。私も手元にスマホがあるとつい見ちゃうけど、もう、満腹。SNSに向いている方って、どんなことを言われても「興味ない」って思えないと、全部受けとめていたら気になっちゃうんですよ。いろんな意見をある程度、自分で選別したり遮断したりしないと、かなりしんどいですよね。

人生も、何か足りないくらいでちょうどいい

爪切男:イベントなどでよく人生相談を受けるんですが、30代~40代の人から「新しい趣味を見つけたい」って聞かれるんです。でも、僕は別にそんなこと気にしないでいいと思いますね。趣味なんて見つけようとするものじゃないし、他人から見たら「それは立派な趣味だよ」っていうこと、結構ありますよね。毎日やっている何気ないことも趣味だって言える。よく噛んで食べることが趣味でもいいじゃないですか。

カマたく:ほかにも悩み相談を受けることは結構あるんですか? 

爪切男:はい、でもうまく答えられなくて。「3年後に起業を考えているんですが」みたいな質問もよく受けるんですが、3年後楽しかったら、起業じゃなくてもいいわけで。予定通りに行くかどうかなんて、誰にもわからないですよね。

カマたく:目の前のことに全力でできることを選んで、それをひとつづつ積み重ねていければいい。そもそもゴールってどこにあるか分からなくて、考えもしないところにあったりする。私の人生もそんな感じだったなぁ。でも、「これがゴールだ」って自分で決めちゃうと、失敗すると落ちこんじゃう。悩む原因を自分で作っていて、これができないとダメ人間だって決めちゃう。それってすごくつらいことなのに。

爪切男:カマたくさんが全部言ってくれた。

カマたく:プラン通り、きっちりできる人はいいんですけど、すごくハードルが高いから。たとえば、爪さんや私の本を読んで書いてあるようにしても、その通りになれるわけじゃない。育った環境とか思想もみんな違うし、同じ人生になるわけがないんだから。

爪切男:そうそう、そのくらいゆったりした考え方でいいですよね。僕、歌舞伎町によく行くんですけど、そこで働いている人や、飲み屋の常連さんってすごく魅力的なんです。歌舞伎町の人って、10年先とか1年先のこととか考えてなくて(笑)、みんな未来を前向きに諦めているというか。

カマたく:あー、それすごくわかります。考えているんだけど、悩まないんですよね。「ここから先はもう、考えてもしょうがない!」って割り切って、その瞬間を生きている。私も歌舞伎町で働いていて、そういう人たちと接しているのは気持ちいいなぁ。こういう生き方、実は日常生活でも実践できるんです。おすすめなのが、一日のタスクを箇条書きにしてひとつひとつ終わらせること。「これをしよう」、「これ終わったら休もう」、「これは楽しいからやろう」っていう感じで。そうやってタスクを消して行ったら、実は「お腹すいた」とか「うんこしたい」くらいしか残らないから(笑)。

爪切男:それは僕もそうですね、お昼は何食べようかなとか。何時に風呂入ろうとか。いつもそれくらいしか考えていない。

カマたく:私もいろんなお客さんから相談を受けることが多いんですが、「不幸体質」っていうのがあるんですよ。何をしても幸せだと思えない。お金をもらっても、仕事が成功しても、有名になっても、何かを達成してもまたすぐ次の幸せを求めて、延々とそれを繰り返してしまうんです。ストイックなんですけど、見ていてすごくつらくて。結局、今の状況で楽しさを見つけられる人が幸せなのかもしれませんね。不幸な人って、目の前にあるものを大切にしないで、足りないものを見つけようとしてしまうんです。「あれがない!これがない」って。

爪切男:YouTubeで生け花の先生が教え子の作品を採点している動画があって。ほとんどの生徒さんが、つけたし過ぎ、と指導を受けているんですよ。先生が「これ要らない」、「あれ要らない」って余計な花を削っていく。人生もそれと同じで、いろいろそぎ落としたあとに残る「何か足りないくらいシンプルなものでちょうどいいのかな」って思えるんです。

カマたく:そういう生き方を知ることができると、毎日が少しラクになるかも。

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