乃木坂46・山崎怜奈が語る、歴史から学んだこと 「生きてさえいればなんとかなる」
乃木坂46の山崎怜奈が2月10日に自身初の書籍『歴史のじかん』を発売した。本作は、2019年までひかりTV・dTVチャンネルで放送されていた「乃木坂46山崎怜奈 歴史のじかん」をもとに、 全50回の放送から14回を厳選してまとめられた歴史本となっている。
専門家の先生と山崎怜奈による解説パートと、山崎怜奈が綴る各テーマに関するコラムで構成された本作。乃木坂46イチの才女として知られる山崎怜奈が、歴史好きの観点から本作を通して伝えたかったこととは? もととなった番組や執筆過程の話も織り交ぜつつ、初の著書を上梓する心境を聞かせてもらった。
テストには出ない歴史のエピソードを興味深く深堀し、現代人の悩みと掛け合わせた考察が織りなす、新しい歴史の見方。時代は違えど、同じくたった一度きりの人生を歩んできた偉人たちから学べる生き方が、たくさんあるはずだ。(とり)【インタビューの最後にチェキプレゼント企画があります】
歴史をテーマにコラムをまとめる
――本作のテーマは歴史。まとめるのが難しい題材ですが、コラムがとても上手で本当に驚きました! もともと、文章を書くことはお好きなんですか?山崎:いえ、文章は人並み程度にしか書かないので、好きでも得意でもないですね。日常的に書いている文章といったら公式ブログや会員制のモバイルメール、コミュニケーションアプリ「755」など、ほかのアイドルの方もされているようなことくらいです。コラムをまとめるのは大変でしたが、大好きな歴史についてだったので楽しく書けました。
――番組のときのツッコミが文章になると、山崎さんのツッコミの秀逸さが際立ちます。普段もメンバーなどにツッコミがちですか?
山崎:本当ですか? 職業柄、番組を盛り上げたり、純粋に気になったりしたことにはツッコミますが、性格は淡々としていますよ(笑)。
――本作のもととなった『乃木坂46山崎怜奈 歴史のじかん』は山崎さん初の冠番組ですが、自分の番組を持ってみていかがでしたか?
山崎:MCを担当すること自体が初めてだったのですが、この番組を通して、歴史以外のこともたくさん学ばせていただきました。30分番組なので、時間に収まるよう番組をスムーズに進行させなければならないのですが、せっかく歴史に詳しい先生方が来てお話ししてくださっているので、リアクションをとって話を盛り上げることも大切だと思っていて。このバランスが難しく、配信されるたびに番組を見直して、反省していました。そのなかで学んだことは、バラエティ番組のようなテロップ編集がないので、コメントは聞き取りやすいコンパクトな言葉を選ぶことです。一言で歯切れよくコメントすることで会話のテンポもよくなりますし、コメントそのものが強調されるんです。もしかすると、「将軍の癖に!」とか短いコメントを意識していたから、コラム内でも冴えたツッコミだと思っていただけたのかもしれないです(笑)。
――なるほど(笑)。番組で取り上げた内容は、山崎さん自身のご要望もあるんですか?
山崎:私からも提案させてもらいました。私がいちばん好きな歴史上の偉人は坂本龍馬なんですが、龍馬はいろんなところで既にたくさん取り上げられているし、知ろうと思えばすぐに調べられるので、この番組ではもっと一般的に知られていない人物をとりあげようとか。「もしも伊能忠敬を大河ドラマの主人公にするなら」という企画も、私が考えたものです。その名の通り、大河ドラマの主人公に伊能忠敬を推薦するといった内容なのですが、歴史専門家の方々にご協力いただき、そのまま大河ドラマの脚本に使えるくらい、しっかり考えさせてもらいました。
――この番組ならではの切り口で面白かったです。正直、蒲生氏郷などは名前しか知らない人物でした。
山崎:伊能忠敬で大河ドラマの主人公シリーズをやったのが面白かったので、もっとマイナーな人物を主人公にしてみようと思い、蒲生氏郷を選びました。蒲生氏郷は織田信長や豊臣秀吉に仕えた人物なのですが、実際に放送されている大河ドラマでも、江や篤姫など、名前自体は知られていないけど、時代を動かしてきた偉人と濃い関係のある人物が主人公になっている作品が多いんです。一般的には知られていない人物を主人公にすることで、また違った角度から時代を見ることができますし、逸話や魅力的な人となりが隠されていることもあるので、そこが歴史を学ぶ面白さのひとつかなと思います。
――実際に番組で取り上げることで、印象が変わった人物はいますか?
山崎:印象が変わったというより、私の知識不足であまり知らなかったけど、知ることができてよかった人物は、塙保己一です。番組で1時間生配信SPをやったときに、ゲストに来てくださったカズレーザーさんが、凄い人なのに過小評価されている人物として紹介されていて、後日改めて番組で取り上げたんですが、彼のやってきたあまり知られていない偉業や存在を学べてよかったと思いました。
塙保己一は江戸時代を生きた全盲の国学者で、日本最大の叢書『群書類従』を編集した人物として知られています。本作では塙保己一の解説も収録しているので、ぜひお手に取って読んでみてほしいです。
――コラムを書く際に難しかったテーマはありますか?
山崎:自分で選んだテーマなので、基本的に書きやすいものばかりでしたが、納得がいかず何度も書き直すことはありました。執筆期間はコロナ禍の6月から12月。初めのうちは一人の時間も多く、集中して考えをまとめられましたが、8月には冠番組『乃木坂46山崎怜奈とおはつちゃん』が、10月にはラジオ番組『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』が始まり、ありがたいことにバタバタした日々を過ごしていました。
人と会って話をすることで、自分が何を言いたかったのか分からなくなってきたんです。でも、自分が納得できないものは世に出せないので、休みの日は逃げ込むように喫茶店や図書館に入り浸って、黙々と考えを整理して書いていました。
――どうしても、コロナ禍の影響はあると。
山崎:そうですね。やはり、考え方や価値観が変わらざるを得ない時期でしたよね。改めて読み直すと、今とは違う価値観で綴られているコラムもあると思うんですけど、当時の自分が納得しているのであれば、考え方が変わったんだなって受け入れられます。本は絶版されない限り誰かの手元に届きますし、購入してくださった方の本棚に置かれ続けるので、納得できるまで書き直させてもらいました。本当に担当の編集者さんには感謝しています。
――執筆中に迷いの世界に入ると、なかなか決着が付けられないと思うのですが、どのようにご自身を納得させられたのでしょうか。
山崎:自分や誰かの声で再生できるかが判断基準になっていました。喋るうちに意見がまとまらなくなってきたとき、曖昧な着地の仕方でも、声で再生ができれば、あやふやなまま考えが終わっている意見として納得できたので。