『BLEACH』の大きな敵、藍染はなぜ生かされたのか? 一護たちとの対比から見える孤独

『BLEACH』藍染、一護との対比で見える孤独

ひとりは、弱いのか

 十刃も強力な力を持っていたが、その上を行くのが藍染だ。誰も逆らえない強さを持っており、その畏怖が忠誠心に繋がっている。藍染のいうことは絶対だし、逆らえば自分の命も簡単に奪われることを肌で感じ、知っている。藍染は強すぎた。生まれたときからずっと。一護や、護廷十三隊が結束すればするほど藍染の孤独は際立つ。

 藍染との戦いに一護は勝った。しかし、藍染は死なない。捉えられても、崩玉によって死刑にすることができない存在となっていたのだ。藍染は本来なら一護に勝てていたはずだ。負けた理由は油断ではなく、実は藍染本人が負けることを望んでいたのではないか。藍染は「私が天に立つ」と言って尸魂界を離れた。天に立ったあと、何がしたかったのかは語られていない。

 なぜストーリー上、藍染は生かされたのだろう。その後にさらに大きな戦いがあり、そこでも藍染は大きな役割を果たすことになる。そのために、ということだろうか。藍染に課せられたのは永遠の孤独だ。孤独な藍染に、一護は仲間と共に力を併せて勝利した。孤独よりも仲間が強いというメッセージだけならば、藍染は倒されていただろう。

 孤独は弱いわけではない。仲間がいるから無敵だというわけでもない。どちらが善で悪というわけでもない。何より藍染は孤独であることを嘆いてはいない。もしかしたら、かりそめの仲間たちと一緒にいることに疲れたのではないか。そして作者は、藍染をそんな一護とは対極に存在させ続けることによって、一護の存在意義を際立たせたかったのではないだろうか。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/bleach.html

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