『BLEACH』藍染惣右介は本当に悪だったのか? 「あるべき世界」が問いかけるもの

『BLEACH』藍染惣右介は本当に悪だったのか? 「あるべき世界」が問いかけるもの

 連載終了から4年が経ってもなお高い人気を誇る久保帯人『BLEACH』。家族を護るために悪霊である虚を退治する死神となった高校生・黒崎一護と、死神、人間、滅却師といった仲間たちとの戦いを描く。

 今回ピックアップするのは一護たちの最大の敵、藍染惣右介である。

穏やかな笑顔、誰もが味方だと信じていた

 護廷十三隊五番隊長として周りから信頼を寄せられていた藍染惣右介。暗殺された際は、読者もまだ見えぬ黒幕の存在にあれこれと考えを巡らせたのではないだろうか。しかし、全ては藍染の思惑通り。ルキアと一護が出会い、そしてルキアが処刑されることも、藍染の企みだった。

 彼の目的は崩玉を手に入れること。そして最終的な目的は尸魂界の王、霊王を倒すこと。その目的を達成するその日まで、誰にも邪魔されないよう、周囲の人間たちの信頼を得るよう動き、準備を整えていたのだ。

 実際の藍染は冷酷で、自分を裏切ったり、期待に応えられない者に対しては容赦ない態度を見せる。自分に一定の忠誠心を見せる者に対しては、信用しているようにも見せるが本心のところは分からない。

「憧れは理解から最も遠い感情だよ」

 誰に対してもあくまで冷静に対応している。怒りに任せて暴力を振るうことも、情に流されることもない。感情で行動がブレないというのは部下にとっては心強いものかもしれない。一方で常に緊張感がある。成果を上げなければならない、失敗できない、というプレッシャーだ。だからこそ、尸魂界を去り、虚圏に拠点を移してからの彼の周りには強く、藍染を認める者しかいなかった。

圧倒的強さを誇る藍染のカリスマ性

「あまり強い言葉を遣うなよ 弱く見えるぞ」

 これは、藍染のセリフの中でも特に有名なものではないだろうか。「弱い犬ほどよく吠える」と似たような言い古された言葉かもしれないが、藍染が言うととにかくパワーがあるのだ。彼の本当の力を目にすれば、その言葉の説得力に震えてしまう。

『BLEACH』16巻
日番谷冬獅郎

 霊圧が他の死神たちよりも圧倒的に強く、同じ隊長格も容易く倒す。天才と言われている日番谷冬獅郎も一戦交えたがあまりの力の差に茫然とするほどだった。鬼道(霊術のひとつ)も高度なものを使いこなし、頭脳明晰で死角なし、というところだ。

 また、完全催眠という能力を持つ斬魄刀「鏡花水月」。隊長や隊員たちに見せることによって、自分の催眠下に置くことができる。これによって、長く尸魂界でも暗躍できたのだろう。そして何よりも藍染にはカリスマ性がある。藍染の強さに魅了される者は多いだろう。そして「憧れ」を抱く者も。藍染の副隊長を勤めていた雛森は藍染に憧れていた。その憧れは強烈なもので、藍染が尸魂界全体の敵とみなされてからも雛森の気持ちは変わらなかった。

「藍染隊長を助けてあげて」
「きっと藍染隊長にもどうにもならない理由があると思うの」

 幼なじみである日番谷にそう訴えかけている。自身が藍染に殺されかけたにも関わらず、だ。「憧れ」も催眠の一種なのかもしれない。憧れの気持ちばかりが先行してしまい、藍染の本当の姿を理解しようとしていない。少しでも藍染に近づこうと努力していた雛森だったが、「憧れ」の影響で自ら遠く離れて行ってしまったのかもしれない。

 ただ冷徹なだけでは人はついてこない。圧倒的な力を見せつけ、恐怖で抑え込むことも可能だっただろう。そうはせず、相手を理解し、それぞれに最も有効的な方法で心を掌握していた。孤高にも見える藍染だが、実は誰よりも他人のことを理解していたのかもしれない。

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