『僕のヒーローアカデミア』轟焦凍が成長したきっかけとは? 封印していた個性を解放した日
「週刊少年ジャンプ」で2014年より連載中の堀越耕平『僕のヒーローアカデミア(以下、ヒロアカ)』。アニメ化のほか、2019年に『僕のヒーローアカデミア The“Ultra”Stage』として舞台化もされている。
主人公の緑谷出久、通称“デク”が通うヒーロー育成の名門校、雄英高校ヒーロー科1年A組には個性豊か“すぎる”面々が揃っている。そんな中で成績優秀で、強力な個性を持っているのが轟焦凍(とどろき・しょうと)だ。
強力な“個性”を持ちながら屈折した思いを抱える
右半分が白色、左半分が赤色の髪で、瞳も左右反対の色。容姿端麗で個性も身体能力も雄英高校で上位に入る実力の持ち主だ。その個性は「半冷半燃」。右半身で凍らせ、左半身で燃やすというもの。氷や炎を自由自在に操ることができる。
そんな彼の父親はオールマイトに次ぐナンバー2ヒーローのエンデヴァーだ。エンデヴァーの目論見は自分の子どもを「オールマイトを越えるヒーローにする」こと。そのために“個性”婚をした。轟の炎の力はエンデヴァーから引き継ぎ、氷の力は母から受け継いでいる。エンデヴァーは、計算通り相反する2つの力を持つことになった轟をほかの子どもたちとは違う『最高傑作』と呼び厳しい鍛錬を強いた。母が庇おうとすると、そのたびにエンデヴァーは暴力を振るい、やがて心を病んだ母は、エンデヴァーの個性が現れている轟の左側の顔に熱湯を浴びせた。その火傷のあとは未だに残っている。
幼いころの経験から、轟は父であるエンデヴァーを忌み嫌うようになる。エンデヴァーの象徴である炎の個性を使わず、氷の能力のみを使っていることが、彼なりの抵抗だった。
そんな轟の気持ちを動かしたのはデクだった。
デクとの対戦で呪縛から逃れるきっかけをつかむ
デクが個性に振り回され怪我を繰り返しながらも圧倒的に成長していく姿は、クラスメイトの目を引いていた。轟にとっても、現状の能力だけを見れば相手ではない。しかし、底知れぬ不気味さがあった。
もともと実力がある爆豪や轟よりもほぼゼロからスタートしているデクのほうが伸び幅が大きくなるのは当然だが、轟は雄英体育祭のときにデクに対して「本気のオールマイト」に近いものを体感していたのだ。
「俺の親父はエンデヴァー 万年No.2のヒーローだ」
「おまえがNo.1ヒーローの何かを持ってるなら俺は……尚更勝たなきゃならねえ」
そう言って、轟はエンデヴァーへの屈託を語る。おまえにつっかかんのは見返すためだ、ときっぱり言い放つ。
「コミックだったら主人公だ それ程の背景」
デクが轟に対してこう思ったように、デクと轟が初めてまともに相対する第31話のタイトルは「全てを持って生まれた男の子」だった。体育祭でついに戦うことになった轟とデク。轟はこの時も炎を出す左手を使わず、凍らせる能力でのみデクと戦う。そんな轟に対して、デクは満身創痍になりながらも「全力でかかって来い!」と叫ぶ。
轟が否定するのは受け継いだ父親の力。それをデクは「君の力じゃないか!!」と叫ぶ。戦いの最中、轟を開放することでデクにメリットはない。でも、デクにとってはそんなことはどうでもいいのだ。ただ、目の前にいる相手に真正面からぶつかっていく。だからこそ、轟はかつて母に言われた言葉を思い出せたのかもしれない。
「血に囚われることなんかない なりたい自分になっていいんだよ」
ようやく轟は一歩を踏み出す。炎を使ってデクに勝利したのだ。捨て身でぶつかってくるデクと、ここで対戦できたことが轟には幸運だったのかもしれない。