『吸血鬼ハンター”D”』菊地秀行、『転スラ』版元から絵本を出版? 気になるその内容とは
イラストレーターとして活躍し、童話の挿絵や、日本・デンマーク国交樹立150周年記念アンデルセン展のイラストを手掛けつつ、『きのこがうまれる夜』など、イラストストーリーを制作し、活動の幅を広げてきた。2019年に開いた個展で絵本『Mou』を自主制作。これが評判となって、改めて学研プラスから刊行された。
雪深い森の中に暮らす少女トットを、不思議な生きものムーが訪ねてくる。ムーとともに森に入ったトットはそこで、不思議な生きものたちと出会う。繊細なタッチと柔らかい線で描かれる世界は、寒いはずの冬の景色を心温まるものに見せてくれる。『Mou』で、そんな世界を描いたNaffyが菊地秀行の絵本で見せてくれるのは、『吸血鬼ハンター“D”』シリーズでイラストレーターの天野喜孝が見せる、耽美で繊細な雰囲気を感じさせつつ、優しさと寂しさが漂う独特のものとなっている。次代に期待のイラストレーターであり、絵本作家と言えそうだ。
菊地秀行には、『吸血鬼ハンター“D”』シリーズと並んで人気の、『魔界都市〈新宿〉』シリーズもある。「魔震(デビル・クエイク)」と呼ばれる謎の大地震によって壊滅し、外界と隔絶されて怪異が起こるようになった新宿を舞台に、十六夜京也が世界の平和を乱す魔道士らを戦う。こちらも、内藤泰弘の『血界戦線』などに雰囲気が受け継がれるなど、『吸血鬼ハンター"D"』と並んでエンタメ小説の原典になっている。
共にアニメ化もされて世界にファンも多いが、テレビシリーズなどにはならず小説として巻を重ねている。Netflixのように豊富な資金力で、原作の世界をとことん追求した映像化を可能にするところが出てきただけに、今一度アニメ化なり実写ドラマ化が行われ、動き喋るDなり十六夜京也を見てみたいところだ。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。
■書籍情報
『城の少年』
著者:菊地秀行
絵:Naffy
出版社:マイクロマガジン社
発売日:2020年12月8日
定価:1,600円(税別)
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