『にがくてあまい』求めたのは互いの幸せ 恋愛を飛び越えた“新しい関係性”
「夫婦」ではなく、「家族」になったマキと渚
マキを恋愛対象として見ることができない渚と、渚への想いを募らせていくマキ。マキに対して恋ではないけれど、愛はある渚。マキには幸せになってほしいが、自分ではできない。ただ、渚はマキの両親のことも大切に想っていた。
マキの両親が経営する農園の野菜も愛している(ついでにマキの父親がタイプでもある)。しかし、娘のマキは今の仕事に人生を捧げようとしていて、農園を継ぐつもりはない。そこで渚が選んだのは自分が後継ぎになることだった。
それは、農園のことが好きだからだけではない。マキの笑顔が好きだから、がむしゃらに働く姿が好きだからだ。マキの人生を守るために、マキの家族の笑顔を守るために自分の人生を選んだ。マキのための選択であり、自分のための選択でもある。マキとその家族が幸せでいることもまた、渚の幸せでもあるのだ。数ある選択の中で、自分もマキも幸せになれる最善の選択をした。
ここで夫婦にならないことは2人にとって――特にマキにとって幸せなのかどうかは分からない。ただ、マキも、相手が存在してくれていること、「おかえり」と「ただいま」を言える関係でいられることを選んだ。
世界には恋と愛があふれている。夫婦だとか恋人だとか、関係には名前が付けられていて、そこに収まろうとする。恋人も夫婦も飛び越えて家族になった2人の関係は、まだ名前のつけられていない新しい形なのではないだろうか。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『にがくてあまい』(マッグガーデンコミック EDENシリーズ)
著者:小林ユミヲ
出版社:マッグガーデン
『にがくてあまい-refrain-』(ヒーローズコミックス)
著者:小林ユミヲ
出版社:ヒーローズ
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