『BLEACH』藍染惣右介は本当に悪だったのか? 「あるべき世界」が問いかけるもの
藍染は悪なのか
なぜ彼は霊王を倒そうとしたのか。その真意は明らかにはされていない。ただ、霊王の姿が明らかになったときに違和感を覚えた読者も多いのではいだろうか。四肢はなく、封印された状態で生きているかどうかも分からない。裏原喜助は霊王を「楔」と言ったが、支配はしていない。治めているとも言えない。そして藍染はこういう。
「勝者とは常に世界がどういう物かではなく、どうあるべきかを語らなければならない」
世界がどうあるべきかが見えていた藍染はそのために戦っていた。しかし、「どういう物か」を語る者たちの前に負けた。どちらが正しいのかは分からない。一護たちの側から見れば、いまある世界を守ることが正義だった。しかし藍染から見れば、あるべき世界を作ることが正義だ。勝者の語る世界が正しいものとされるのであれば、この世界はなんとも理不尽なもののように思えてくる。藍染はそんな理不尽を語るための、理不尽な存在だったのかもしれない。
(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))
■書籍情報
『BLEACH』(ジャンプ・コミックス)74巻完結
著者:久保帯人
出版社:株式会社 集英社
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