捨てられた命を守りたい……3人のおじさんたちに愛された「河原猫」とは
例えば、本書に登場する高野さんもそのひとり。ホームレスの高野さんは空き缶を集めた収入で猫のフード代を捻出。ボランティアさんたちと協力し、多摩川で13年間、犬猫の保護活動に勤しんでいた。
しかし、昨年、悲劇が。台風19号が日本を襲った際、お世話していた猫と共に、増水した河川に飲み込まれてしまったのだ。おそらく、長年気にかけてきた猫たちを何とかして守りたいと思ったのだろう。遺体が見つかっていないため、高野さんは現在、行方不明という状態。だが、奇跡的に生き残った3匹の猫たちはそんなことなど知らず、ボランティアさんのお世話を受けながら、再び高野さんに会える日を待ちわびている。
自分の命を投げ捨ててでも小さな命を守り抜きたかった、高野さん。彼の13年間は、ゴミのように動物の命を扱う人の目にはどう映るのだろう。そして、毎日ご飯を欠かさずにあげ続けてきた加藤さんの努力や、シロちゃんを家族の一員として迎えた著者の想いはどう響くのだろうか。
なお、太田氏に迎えられたシロちゃんは2017年に小脳に障害が見つかり、その後、寝たきりの状態になったが、最後まで愛されながら家猫としてニャン生を全うした。本作に収められている闘病記録は可哀想なものではなく、愛された証だといえるだろう。
シロちゃんに向けた太田氏からの、最後のラブレター。そんな風にも受け取れる本書には、ひとつの命と真摯に向き合う人々の猫愛が詰め込まれている。ここからあなたは、どんなことを学ぶだろうか。
■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。
■書籍情報
『おじさんと河原猫』
著者:太田康介
出版社:扶桑社
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