エルヴィスが最も愛したリングとは? 映画『EPiC』で蘇る70年間未解明のアクセサリーの真実

エルヴィスが最も愛したリングとは?

 2022年にエルヴィス・プレスリーの生涯を描いた伝記映画『Elvis』が公開され、話題となったことは記憶に新しい。筆者も、同年に書籍『1954-56年のエルヴィスは神がかっていた。』(立東舎/船橋羊介 著)を編集・制作し微力ながらブームを後押ししたつもりだったが、公開が終われば、世の中の熱もすーっと冷めていくように感じられ、やや寂しい気持ちにもなったのも事実だ。

 次のエルヴィスの映画はいつになることやら……と暗澹とした思いでいたが、幸運にもそのときは僅か4年後にやってきた。5/15に公開したばかりの映画『EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』。『Elvis』と同じバズ・ラーマン監督が指揮をとり、再びエルヴィスがスクリーンに戻ってきた。

『EPiC』が映し出した、これまで見えなかったエルヴィス

 この映画は、『Elvis』の制作過程で59時間にも及ぶ未公開フィルムが発見されたことから端を発している。最先端のレストア/リマスター技術を駆使して2年以上の歳月を費やし、それらを復元。また、未発表音声を映像とシンクロさせ、エルヴィスの想いを本人の声で再現された映像がドキュメンタリータッチで進行しているので、あたかもエルヴィス・プレスリーが蘇り、観客にメッセージを送っているかような錯覚に陥るほど。エルヴィスファンにとってなんと幸せなことだろう。

 そして、映像の解像度があがれば、本人が身に着けている服や小物などのディテールの解析が進むことも意味する。これもまたファンにとって幸せなことであるはずだ。

 書籍『1954-56年のエルヴィス~』の著者・船橋羊介氏は、日本随一のエルヴィスグッズのヴィンテージディーラーであり、またエルヴィスが身に着けている数々のファッションアイテムのディテールを分析し、細部に至るまで復刻させてきた。映画『Elvis』のなかでオースティン・バトラー扮するエルヴィスが着用した衣装のシャツも、じつは船橋氏の手掛けたもので、実際のエルヴィスが1stアルバムのジャケットのインナーに着用したシャツの復刻モデルなのだ。

70年越しに解き明かされた“伝説のピンキーリング”

 たとえば、エルヴィスが身に着けていた小物として有名なのは、ロードエルジンの「oxford」や「jump hour」、そして50年代のファッションとして流行したIDブレスレッド、指輪でいえば、ホースシューリングもシンボリックだろう。これらエルヴィスの愛用品は書籍『1954-56年のエルヴィス~』にて船橋氏がその魅力をたっぷりと語ってくれているのでぜひ読んでいただきたいところだが、じつはそんな船橋氏をもってしても、長年謎のままになっていたアクセサリーがあった。それが、エルヴィスが生涯でもっとも長く小指に着けていたいわゆるピンキーリングだ。

 そのリングは、姉のように慕っていたジュディから1956年にプレゼントされ、同年の6月5日のミルトンバールショー出演時から1961年までたくさんの写真や映像で確認できる。その後に奥さまになるプリシラに婚約指輪としてプレゼントされ、プリシラの左薬指に着けられた1970年の写真も残っている。エルヴィスが最も愛用していたリングであることは疑う余地はないが、ただ残念ながら、これまでの写真ほとんどにピントがあっておらず、写真によって形状が異なって見えるためデザインの判別がつかない。

  「それでも諦められず、指輪の形をつきとめたくて……」という船橋氏は、株式会社ジェイシー企画と手を組み、多額の資金を投じて徹底した画像解析に挑むことになる。

 「わかったことは、左右非対称なデザインだということ。それが、写真によって形が違って見える理由でした」。

 画像解析を重ねるうちに、左右のくぼみの長さや形状が判明。真ん中に配置された黒い石はサファイアだということも突き止めた。最も難解だったのは、4つの小さなホワイトサファイアのレール。画像解析が進化したとはいえ、写ってない部分まで浮き出てくるわけはない。取り付け方は、職人さんとともに50年代に実際にあった取り付け方を踏まえて検証し、ついに難攻不落のアクセサリーの形状がクリアになったのだ。

 「エルヴィスが彼の人生で最も長く愛用した指輪であるとファンは知りながらも、現物を見ることはかないませんでした。まさにエルヴィスリングといえば、このリングです」と満足げに語る船橋氏。エルヴィスメジャーデビュー70周年、同時にこの指輪をエルヴィスがつけてから70周年という記念すべき年に、このピンキーリングを完全復刻。国内外の全世界のエルヴィスファンからのオーダーが殺到している(※1)。

※1 株式会社ジェイシー企画 https://jcplanningco.com/

  「じつは、最初はAIを使って調査をしてみたのですが……結局、納得がいかず、結果的には地道な解析に頼ることになりました」と船橋氏。AIに頼らずに、根気よく時間をかけてアクセサリーの正体をつかんだ船橋氏の情熱は、映画監督バズ・ラーマンに相通じるものがあるだろう。その根底に流れるのは、エルヴィス愛に他ならない。

 そんなわけで、『EPiC/エピック エルヴィス・プレスリー・イン・コンサート』を観るのであれば、ぜひ楽曲だけでなくエルヴィスの身に着けていたアクセサリーのことも気にかけて観てほしい。

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