『鬼滅の刃』キャラクター人気投票、なぜ我妻善逸が首位に? ランキングを徹底考察
これはいささか乱暴な見解だというのは自分でもわかっているが、あえて書かせてもらえば、もしかしたら鬼舞辻󠄀無惨は、作品世界における恐ろしい「悪」の象徴ではあったが、ひとりの「キャラクター」としては読者に認識されていなかったのかもしれない。図らずも無惨自身、21巻で「私に殺されることは 大災に遭ったのと同じだと思え」などといっている。なるほど、キャラクターの人気投票に、地震や台風のようなものに1票を投じる人はいないだろう。だからこそ、ちゃんと生きたキャラクターとして成立している(よりわかりやすくいえば「キャラが立っている」)ほかの悪役たち――黒死牟、魘夢、猗窩座、童磨、獪岳といった鬼たちのほうが、無惨よりも上位にランクインしたのではないだろうか。おそらくはこれが、(私が考える)鬼舞辻󠄀無惨の順位が低い最大にして唯一の理由である。
さて、最後に、「柱」たちについて述べたい。なぜ、冒頭に挙げたのが13位までというなんとも中途半端な順位だったかといえば、そこまでにランクインしているキャラクターの半分以上が、鬼殺隊の柱たちだからだ(※)。
(※)13人中8人(2位、3位、5位、7位、8位、9位、12位、13位)が柱。残念ながら「岩柱」の悲鳴嶼行冥のみが22位と(柱としては)少し低めの順位だった。
柱というのは鬼殺隊剣士の最高位であり、物語当初は9名いる。ただし、すべての柱が実際に姿を現すのは、単行本でいえば6巻になってからである。同巻収録の第45話、トビラページでもある見開きの絵を見てほしい。ここでずらりと並んだ一癖も二癖もあるような男女の姿を見て、そこから先の展開を何も期待しない漫画読みはいないだろう。誤解を恐れずにいわせてもらえば、どちらかといえばスロースタートだった『鬼滅の刃』の物語は、この瞬間から激しく動き出したといってもいいのである。
そう、この柱たちが、主人公の炭治郎や今回1位になった善逸らとは別に、それぞれが主役級の活躍を見せてくれたからこそ、『鬼滅の刃』の世界はより深く、より広くなったといっていい。特に、最初から最後まで竈門兄妹のことを信じ続けた「水柱」の冨岡義勇と、炭治郎に剣士としての誇りだけでなく、正しい人間のあり方をも教えた「炎柱」――煉獄杏寿郎の存在価値は計り知れないものがあったといっていいだろう。
いずれにせよ、ある意味ではこの柱たちが本作の「おもしろさ」を決めたのであり、その名のとおり作品を「支える」存在でもあったということが、第2回の人気投票の結果にも表れたのだとはいえないだろうか。
■島田一志……1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。https://twitter.com/kazzshi69
■書籍情報
『鬼滅の刃』既刊22巻
著者:吾峠呼世晴
出版社:集英社
価格:各440円(税別)
公式ポータルサイト:https://kimetsu.com/