「トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ」 『美味しんぼ』読者の心を打った“神回”4選

「トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ」 『美味しんぼ』読者の心を打った“神回”4選

お見舞いの決め手(32巻)

 大研社の団社長から山口旅行に誘われた栗田。山岡が好きな栗田だけに、拒否する方向だったが、山岡と二木まり子の仲睦まじい様子を見て、山口行きを決意する。

 ところが山岡への想いを断ち切れず、思い悩みながら出勤すると、赤信号を無視して歩いてしまい、車にはねられる。命に別状はなく、2、3日の入院になると、団社長が真っ先に駆けつけ、「今夜の食事は任せてください」と部屋を飛び出した。

 山岡が顔を見せないことにショックを受ける栗田に、団社長が攻勢をかける。「レストラン・団の営業開始です」と部屋のドアを開けると、金の力に物を言わせ、東京一のフランスレストランを貸し切り、自前のキッチンカーで料理を作らせたのだ。

 贅沢を尽くした料理を振る舞ったのち、「ゆう子さん」とキスを迫るような勢いで栗田の肩に手をかける団社長。するとここで顔を汚くした山岡が登場。「ほら、これを取ってきてやったぜ」とノビルを手渡す。栗田が「どこで取ってきたの?」と聞くと、「去年行った秘密の場所」答える山岡。それは葉山の山奥だった。

 「もっと早く来るつもりだったけど、今年はあまりなくて、あちこち探し回ったんで遅くなってしまった」と話す山岡は、調理のため配膳室へ。栗田は「山岡さん、今日1日かけてノビルを取りに行ってくれたのね…」と喜ぶ。

 フランス料理とは全く異なる強い喜びを見せる栗田に団社長は「今回は僕の負け」「山口行きは延期しましょう。出直します」と肩を落とし去っていく。状況がなぜか掴めない山岡は「団社長、どうしたんです? ノビル嫌いですか?」と声をかける。そんな山岡に栗田は「良いのよ」と呟き、「この気持ち、最高」と笑った。

 『美味しんぼ』中期は山岡、団社長、近城が栗田を嫁にしようと争う展開が描かれたが、積極的にアプローチする団社長と近城に対し、栗田が想いを寄せる山岡は世界一の鈍感ぶりを見せており、読者はやきもきさせられていた。

 そんななか、金に物を言わせる団社長に、葉山の山奥を駆けずり回ってノビルを取ってきたことで対抗する形となった山岡。そんな山岡の誠意と優しさに、心温まるものを感じる読者が多かった。

雄山の危機(76巻)

 海原雄山が交通事故に遭い、全身を強く打ち意識不明の重体になる。連絡を受け心配する栗田と美食倶楽部主任中川の妻おチヨを他所に、山岡は「俺の知ったことじゃない」と突き放してしまう。

 この日アジアの首脳を招いた夕食会を開く予定だった美食倶楽部は、主の不在に主任の中川が頭を抱える。ピンチのなか、山岡が美食倶楽部の厨房に入り、中川を「なんてざまだ」と叱責。そして料理人にも檄を飛ばし、メンバーをまとめ上げ、料理の指揮を執り、窮地を救った。

 料理が一段落したところで、海原の病室から美食倶楽部に駆けつけた栗田が山岡を病室へと連れて行く。重体の雄山と対面すると、「お父さんって呼んであげて」と頼み込んだ。「それだけはできない」と断る山岡に、栗田は嫁として雄山が山岡に注いだ愛情を列挙し、必死の説得を行う。

 苦しむ山岡だったが、病室を出る間際に「おやじ…」と声を絞り出す。その数秒後、雄山が目を覚ましたのだ。おチヨから「士郎さんが美食倶楽部で指揮を執っている」と告げられると、「はて? さっき士郎の声がしたように思ったが…」と呟いた。

 雄山が迎えた生命の危機を対立する山岡が救う。心の奥底で繋がっていた親子2人に、感動する読者が多かった。

感動話が多数あるのも人気の秘密

 料理の食べ方や紹介、そして対決などがクローズアップされがちな『美味しんぼ』だが、感動できる話も多数ある。料理だけではなく、物語として楽しく、そして感動できる要素が含まれていることも、この漫画が国民的人気を持つ要因だろう。

 

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