『タッチ』『うる星やつら』……80年代『週刊少年サンデー』ヒットの法則とは?
亡き父の夢を受け継いで、頂点を目指す主人公たち
70年代の『がんばれ元気』(小山ゆう)にはじまり、80年代の『六三四の剣』、そして90年代の『MAJOR』(満田拓也)、『俺たちのフィールド』(村枝賢一)にいたるまで、亡き父の夢を受け継いで、スポーツの世界で頂点を目指す主人公を描いたこれらの作品は、時代を超え、いまなお数多くの読者を魅了し続けている。また、死ぬのは父親ではなく双子の弟だが、『タッチ』もそうした作品の系譜に含まれるといっていいだろう。
ただし、忘れてならないのは、これらの漫画の主人公たちが、決して父(や弟)の呪縛によってスポーツをやっている(やらされている)わけでない、ということだ。当然、本人たちがそれ(ボクシングや剣道や野球やサッカー)を心から好きだから、彼らはその道にすべてをかけるのだ。自分を導いてくれた人の夢というものはたしかに大切だが、あくまでも自発的に、そして前向きに主人公たちががんばるからこそ、その姿を見た数多くの読者は胸を熱くするのだといっていい。
以上、文字数の関係でやや駆け足になってしまったが、80年代の『少年サンデー』の漫画の特徴について書かせていただいた。実はこの他にも、当時の同誌の漫画の多くには、「最終回で読者の予想を大きく裏切る」という興味深い特徴があったりもするのだが、それについては、機会があればまたどこかで書かせていただきたいと思う。
[筆者付記]本稿は、My First BIG Special『少年サンデー’80セレクション』(小学館)に掲載された拙稿、「八〇年代の『少年サンデー』は何を描いたか」を下敷きにしています。
■島田一志……1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。https://twitter.com/kazzshi69