烏野、青葉城西……『ハイキュー!!』3年生たちが見せる“同期の絆”

『ハイキュー!!』3年生たちの絆

強豪校だからこそのレギュラー争いの中で生まれる友情 青葉城西高校

手前・岩泉(左)、及川(右)/奥・花巻(左)、松川(中央)、2年リベロの渡(右)

 及川擁する青葉城西高校は宮城県の中でも強豪校に属する。影山も通っていたバレー部が強いことで有名な北川第一中学から進学する選手が多い。及川のほか、岩泉も北川第一中学の出身だ。

 強豪校となれば、自然と入部者数も増える。その中でのレギュラー争いは、ベンチ入りさえも大変だろう。及川、岩泉のほか、3年生レギュラーは花巻、松川の4人だ。松川は日向がのちに「嫌なブロッカー」のお手本とした選手だ。花巻は守備も攻撃も上手く、そして時にはトスもあげるオールマイティーな選手である。

 強豪校で、レギュラー争いも熾烈にもかかわらず、青葉城西の選手たちはどこか肩の力が抜けている。及川というキャプテンのカラーが出ているからかもしれないが、ギスギスした感じがない。とはいえ、一緒に戦ってきた苦しみは共有している。

 春高予選で烏野に負けたあと、エースとして決めきれなかったことに悔し涙を流す岩泉の背中を及川、花巻、松川が叩く。言葉はない。しかし、それだけで岩泉は涙をぬぐい、前を向く。短いシーンだが、4人の絆が垣間見ることができる。

 そんな4人だけの物語として終わるのかと思いきや、17巻では巻末の番外編として青葉城西高校3年生の春高予選敗退後の様子が描かれている。試合後に3年生だけでバレーボールをしているのだ。初登場のキャラクターたちも描かれる。及川は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら「3年間ありがとう!!」と声を張る。つられるようにして涙をこぼす同期たち。コートに立っている者だけがチームメイト、というわけではない。

 たった一言の「ありがとう」にどれだけの重みが詰め込まれていくかがよく分かる。

同期にしか分からないことがある

 音駒のように、最初は反発し合っていた黒尾と夜久が3年生になったころには目標を同じくする同志となっていたり、白鳥沢の牛若と天童が大人になってから親友だと認識していたり。3年あれば、関係性は変わる。

 読者が知ることができたのは高校時代の1年間だけだ。それまでのどんな2年間があって今があるのか。そして、1年生、2年生だったキャラクターたちがどんな時間を経て、どのような絆を築くことができたのか。そんなことを想像してみるのもおもしろいかもしれない。

(文=ふくだりょうこ(@pukuryo))

■書籍情報
『ハイキュー!!』(ジャンプ・コミックス)既刊44巻
著者:古舘春一
出版社:株式会社 集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/haikyu.html

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